クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

バイエルン対ドルトムント

 近年の独ブンデスリーガの人気はすごい。どの試合でもお客さんが沢山入って大盛況である。もちろん対戦カードにもよるが、閑古鳥が鳴くスタジアムはほとんどない。ましてや強豪チーム同士、近隣チームとのいわゆるダービーマッチとなると、ボルテージは一気に上昇し、チケット入手はたちまち困難を極める。
 こうしたリーグ戦の隆盛が個々の選手を強くし、チームを強くし、最終的に代表を強くする。ドイツがワールドカップを制したのはいわば必然の結果というわけだ。
 
 以前はそうでもなかった。名門クラブのバイエルンでもドルトムントでもシャルケでも、ふらっとスタジアムに出掛けて、けっこう当日券が買えた。我々のような外国人観光客にとってはありがたかった。
 それが、今では前売り段階で早々に売り切れてしまう試合が多い。そもそもシーズンチケットでほとんど埋まってしまうのである。ちょっと過熱しすぎじゃないか。我々外国人観光客にとっては厳しい時代である。
 この傾向、2006年のワールドカップ・ドイツ大会あたりからのような気がする。開催にあたってスタジアムが改装され、快適な観戦環境が整い、フットボールの面白さ、応援する楽しさをドイツ人は改めて見つけたのかもしれない。
 
 
 数あるブンデスリーガの対戦カードの中でも最大級に盛り上がる試合が二つある。一つが「ルール・ダービー」と呼ばれるシャルケドルトムント、もう一つがドイツのナツィオナル・ダービーと呼んでもいいバイエルンドルトムントだ。以前にテレビ中継を見ていたら、実況アナウンサーが「チームに命を捧げられる筋金入りのファンしかチケットを買えない」などと紹介していたが、あながち大げさな話ではない。たぶんそうなんだろうと思う。
 
 既に予告しているとおり、私は来週末にミュンヘンに行くのだが、旅行計画を立てた段階において「都合よくバイエルンの試合が観られたらいいな」と思っていた。欧州屈指の名門クラブのチケットを取るのは大変だが、相手が強豪でなければひょっとしたら入手出来るかもしれない。
 もちろんアウェイでなくホームゲームとして開催されなければならないし、夜はオペラがあるのでアフタヌーンの試合でなければならない。(※分散開催のためナイトゲームになる場合がある。)
 そうしたいくつかの条件をクリアする運も必要だった。
 
夏に14-15シーズンの年間試合スケジュールが発表されると、私は直ちに日程をチェックした。
で、絶句してしまった。
私のミュンヘン滞在中に組まれた試合、それは、よりによってドルトムント戦だった・・・・。
 
がっくりと肩を落としてしまった。
ビッグマッチ過ぎる。なにもこんなすごい試合じゃなくても良かったのに・・・。
そりゃもちろん観られれば嬉しい。こんなチャンスは滅多にない。狂喜乱舞である。香川も復帰したし。
ただし、観戦できればの話。
はっきり言おう。無理!
正攻法ではチケットは絶対に買えない。だって公式ショップからの前売りは「ゼロ」なのだから。
 
どうしても観たいというのなら、方法はある。
簡単な話だ。札束を積んで闇から買えばいい。それだけのことだ。闇にはそうしたチケットが沢山落っこちている。
 
ネットで調べた。いわゆるブローカーだ。
一番安いカテゴリーがアウェイサポーター用の立ち見席で、それでも1枚2万5千円もする!立ち見だよ!
S席、なんと10万円!!
平均でだいたい5~7万円!!
 
凄まじいよな・・。日本国内にはこれほどのスポーツ・イベントは存在しない。舶来品と言われる一流歌劇場の引っ越し公演をも凌ぐ。
これが世紀の祭典であるワールドカップ勝戦でもなく、オリンピック開会式でもなく、普通の国内リーグ戦で毎年発生するというのだから驚愕だ。
 
 結論から言うと、今回の試合、午後ではなくナイトゲームとなり、時間帯がオペラと重なった。オペラかサッカーかどちらかを選ばなくてはならないが、既にオペラのチケットは入手済。
 ということで、諦めを決断するのはそれほど難しいことではなかった。
 
しかし・・・。
もしオペラと重ならなかったら・・・果たして私はどうしただろう?
10万はさすがに手が出ない。だが・・・。
 
悪魔が耳元で囁く。
4万くらいなら・・もちろん高い金額だが千載一遇のチャンスではないか・・それだけの価値がある試合だぞ・・一生に一回と思って清水の舞台から飛び降りるのも・・なぜオペラで4万出せてドイツ屈指の好カードで躊躇する?・・「あの時観ておけば」などと後悔しても後の祭りだぞ・・・。
 
ええーい! 今回はオペラと重なったことにより観られないことが決定なのだ。考えても仕方ないことなのだ。考えるな!考えるな!忘れろ!
 
ところで私の友人諸君、帰国後に私に会ったら、次のように声を掛けてみるといい。
「なに?ミュンヘンに行って、そこでせっかくドルトムント戦をやっていたのに観なかったって!? いったい何しに行ったの? ばかじゃないの?」
 
諸君は「おぺらが見たかったんだよおぉ!」と言い訳しながら頭を抱え、地面をのたうち回る哀れな私を見ることが出来るだろう。