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2013/11/21 バーミンガム市響

2013年11月21日  バーミンガム交響楽団   東京芸術劇場
ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)
シベリウス  ヴァイオリン協奏曲
 
 
 名曲と名ソリストを携えてやってきたバーミンガム市響。幸か不幸か、豪華なBIG3オケの来日と重なってしまったが、これらとは縁というか、つながりがあることに気づく。
 まず、バーミンガム市響はラトルが叩き上げ、ラトルの名声と共に名門の仲間入りを果たしたオーケストラである。次に、ネルソンスとヤンソンスは同郷であり、師匠と弟子の関係でもある。そして、プログラムでチャイ5という曲がバッティングした。また、ネルソンスの前回の来日はウィーン・フィルとだった。
 もちろん偶然のことだと思うが、なかなか興味深い現象が東京で実現したというわけである。
 
 ネルソンスは、本当は2011年4月に東京・春音楽祭でローエングリンのコンサート形式上演のために来日するはずだった。震災と原発事故のために公演が中止になってしまったのは本当に残念であった。何と言っても、バイロイトローエングリンを振った指揮者だったのだから。
 そのローエングリンの第一幕の前奏曲が今回のプログラムに入った。中止になってしまった公演のせめてもの代わりということなのであろうか。
 
 
 そのネルソンスの指揮は実に熱血的だ。身振りが大きく、ダイナミック。弧を描くように手を大きく回し、狭い指揮台をいっぱいに使って動く。
 時にオーバーに、時には怪しげにも見える身振りで必死にオーケストラに伝えているのは、テンポでも強弱でもなく、音のニュアンスだ。「こういう音を出してほしい」という指示を、全身で表現している。あれだけ大げさに指揮をされたら、そりゃオーケストラもそういう音を出さざるを得ないだろう。ということで、展開された音楽は完全にネルソンスのこだわりの世界。それは非常に面白く、非常にユニークだった。
 
 バーミンガム市響であるが、基本的には良いオーケストラだと思う。だが、今回に限ってはやっぱりタイミングがあまりにも悪すぎた。本当は比べたくもないし、その必要もないはずだが、人間の感性っていうのは実に正直なのだ。3日前のベルリン・フィルの衝撃的な音が耳に残っている以上、物足りなさを感じてしまうのは、もう、どうしようもないのである。スマンね。
 
 ヒラリー・ハーンは、いつもながら端正でパーフェクトな演奏。5年前のノセダ指揮BBCフィルハーモニックとの来日公演でもシベリウスを披露していて、その時の際立った演奏が忘れられないが、今回はもう少し落ち着いた印象を持った。その分、貫禄の佇まいも増した気がする。クールな美少女から女王へと、着実に階段を上がっていっているハーン。親しげに「ヒラリン」と呼べなくなる日は、そう遠くないかもしれない。