クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

山田和樹

日本人指揮者界のホープ山田和樹さんに関するビッグ・ニュースが立て続けに入ってきている。

まず、来シーズン(2024-25年)のベルリン・フィル定期演奏会に客演指揮者として招聘されたというニュース。つまり、ベルリン・フィル・デビューだ。
時期は来年6月。プログラムは、レスピーギ「ローマの噴水」、武満徹作品、そしてサン・サーンス「交響曲第3番オルガン付」。

実は今週末、彼はシカゴ響にもデビューする。ベルリン・フィル、シカゴ響という超メジャーへの相次ぐ進出は、素直に快挙と言っていい。


次に、バーミンガム市響の音楽監督就任。
これまで首席客演指揮者、首席指揮者というポストを経てきており、階段を更に登ってついに頂きに立ったことになる。これもまた、一つの快挙であろう。

ただし、バーミンガム市響という楽団が、にわかに雲行きが怪しい。つい最近、別の問題が大きく報じられた。
市の財政状況が著しく悪化し、補助金が大幅削減されるというのである。楽団存亡の危機とも言える重大局面に陥っているのだ。
悠長なことを言っていられない楽団は、クラシックファンにとって信じられないような奥の手を打って出た。
それが、なんと、演奏中の録音録画の許可・・・。

たとえ暴挙と言われようと、伝統的なしきたりを見直し、なりふり構わない一大改革を施してファンを繋ぎ止め、存続を図ろうと必死のオーケストラ。山田さんは、そんなオーケストラを率いるのだ。ある意味、火中の栗を拾うということであり、前途洋々、輝かしい未来が約束されているかどうかは、むしろ不透明。さすがにキャリアに傷がつくなどということはないだろうが、責任が問われるポジションだけに、若干心配の種ではある。

まさかオーケストラの方に「山田さんを担いで、ジャパンマネーのスポンサーを拾おう」みたいな魂胆があるとは、とても思えないが・・・。
そもそもジャパンマネーは今、世界において価値が暴落しているわけだからねー。


いずれにしても、山田さんには純粋に音楽面において、成功を収めていただきたい。

小澤征爾という巨星が堕ちた。その次を追いかけていた大野和士さんも、何となく日本という居心地の良い場所に収まりつつある。
そうした現状下、世界を股にかけようという指揮者はもはや山田さんくらいしかいないのだ、悲しいことに。
(もしかしたら、あと数年後くらいで、沖澤のどかさんあたりがひょっこりと頭角を現すかもしれない・・・。いや分からないけど。)

バーミンガム市響は、かつてラトルを輩出し、ネルソンスもここから飛躍を遂げた。
是非彼らのようなホップ・ステップ・ジャンプを見たい。
バーミンガム、シカゴ、ベルリンという足掛かりは、彼にとって大きなチャンスなわけだ。


ただし、一つだけ余計な物言いを。
メジャーの客演は、チャンスであると同時に、オーケストラ側から厳しい目で審査される試験の場でもある。
もし、そこで失格の烙印を押されると、次はない。「もう1回やらせてください」という願いは実らない。

日本には、たったの一度だけベルリン・フィルに登場し、たったの一度だけバイロイト音楽祭に登場し、その後二度と呼ばれず、でも本人の経歴には燦然とその事実記録が残り、そこでいかにも箔をつけているような先人がいる。
(誰とは言わない。が、みんな誰だか分かる。)

是非そうならないように健闘を祈りたい。