指揮 ヴァシリー・シナイスキー
デジュ・ラーンキ(ピアノ)
モーツァルト ピアノ協奏曲第27番
秋のタコ祭り第1弾。
指揮のシナイスキーは、日本ではそれほど名を馳せていないと思うが、ロシア、ことにモスクワにおいて非常に人気があり、「ラザレフよりも上との評価」という噂を聞いたことがある。是非聞いてみたいと思っていた指揮者なので、このコンサートはとても楽しみにしていた。
やっぱりメインのタコの感想から。
曲があまりにも巨大で、フォルテッシモの箇所は咆哮を極め、一歩間違うと音楽が暴徒化する危険極まりない曲だが、さすがシナイスキー、動じず、余裕のタクトで的確な交通整理だ。オーケストラ奏者は、もちろん技術的には大変だったと思うが、それでも演奏していて楽しかったのではないだろうか。指揮者の懐が大きいので、音を思い切り発散させることができる。最終的にギリギリMAXのところで指揮者がしっかりと統制してくれるので安心なのだ。
それにしても、なんてアバンギャルドな曲だろう!スターリン体制の圧力に屈して初演直前でキャンセルとなったが、作曲家は曲を葬らずに欠番のままにし、沈黙のまま初演の機会を25年間も待ったという曰くつきエピソードも最高だ。
タコマニアであるかどうかは、この曲が好きかどうかで測ることが出来ると言ってもいいかもしれない。
私? そんなもん答えるまでもありません(笑)。
そうそう!実はこの日、私の隣に座っていた若い女性が、この狂気の音楽に合わせて体を揺すり、指や首などを動かしていた。明らかにこの曲を知っている様子だった。普通だったら、座席でそういう動きをされると煩わしいと感じるのだが、この日は煩わしいというより、「え??あなた、この曲を知っているの? この音楽が感性に合うの?? この音楽で乗れるの?? ひょっとしてタコ好き??」と良い意味で驚き、そして面食らった。
どうでしょう、この後一緒にお食事でもしませんか? ショスタコについて語り合いませんか?(笑)
順序が逆になったが、一曲目のラーンキのモーツァルトもとてもしなやかで、なおかつ独自のリリシズムが感じられてとても良かった。