2012年9月14日 中村恵理 ソプラノ・リサイタル 紀尾井ホール
中村恵理(ソプラノ)、マッシミリアーノ・ムッラーリ(ピアノ)
ベッリーニ カプレーティ家とモンテッキ家より「おお、幾たびか」
ドニゼッティ ドン・パスクワーレより「そのまなざしに騎士は」
プッチーニ つばめより「ドレッタの夢」
グノー ロメオとジュリエットより「私は夢に生きたい」
現在、バイエルン州立歌劇場と専属歌手として契約し、ミュンヘンを中心に活躍中の中村さんのリサイタル。 昨年秋の同歌劇場の引越し公演にも随行し、ナクソス島のアリアドネに出演(水の精)して、錦を飾っている。
‘海外組’になってから彼女を知ったわけではない。私は国内で活躍していた頃から彼女に注目していた。ホントだってば。
2003年頃から頭角を現し、新国立劇場でフィガロの結婚(バルバリーナ)、こうもり(イーダ)、イドメネオ(イリア)、フィデリオ(マルツェリーネ)、ファルスタッフ(ナンネッタ)などの諸役に出演しているが、その中でも特にイドメネオのイリア役を歌った公演で、私はソリストとしての才能に惚れ込み、その豊かな将来性をはっきり認識した。このイドメネオには、藤村実穂子やエミリー・マギーなどの有名歌手が出演していたが、中村さんの実力と存在感は彼女らとまったく遜色がなかった。大いに魅了されたことを覚えている。だから、その後の海外での活躍は、まるで我が子の成長のように嬉しく思ったし、そういうわけで今回のリサイタルのチケット購入は速攻だった。
プログラム構成は見事だ。前半は歌曲、後半はオペラ・アリア。イタリア物をベースとしつつそこにフランス物を加え、更にR・シュトラウスを入れることでドイツを拠点にしているその成果もしっかりアピール。
これが成長の跡なのかどうかは分からないが、新国立劇場の諸役を聴いた時と、声の印象が異なった。
以前の印象は、「透明感溢れる清らかな声」だった。色で言うなら、「純白」。今回のリサイタルを聞いて感じたのは、「情熱溢れる芯の強い声」。色は「赤」だ。
おそらく、それは「野心」に違いない。彼女の目は遠くに向いている。現状における成果を精一杯披露しつつ、もっともっと飛躍したいという姿勢がそこに表れていた。今後の活躍がますます目が離せなくなりそうだ。