アカデミア研修生によるオペラ公演は午後2時に終了。その後、ランチを取るために、劇場近くのピッツェリアに行った。すると、そこに出演者(歌手たち)のうちの6人くらいが連れ立って入ってきた。彼らも無事に公演が終わり、ホッとして、「さあメシを食いに行こうぜ!」とやってきたのだろう。
舞台では見事な歌と演技を披露していた彼らも、私服に着替えると見分けがつかない。そこら辺にいる若者たちとまったく変わらない。お店には公演を鑑賞したお客さんが私だけでなく何人もいたのに、誰も彼らに気が付かない様子だった。
私は一瞬、連中に「良かったでしたよ!」と声をかけようかと思い、でも席がやや離れていたのでやめた。それに、公演の出来は本当に素晴らしかったけど、それでもやっぱり彼らは研修生。名前も顔も衆目に知れて、声をかけられたり、サインを求められるくらいになるためには、更なる研鑚と飛躍が必要。
「そうなるように頑張れ!」と心の中でエールを送った。
何はともあれ、こうして楽しかったペーザロの滞在は、予定していた全ての演目を鑑賞し、無事終了となった。
(あ~あ、終わっちゃったよ。くそー。)
午後7時にチェックインすると、この後はもう何もすることがない。
つい毎日毎晩のようにコンサートや劇場に行く予定を入れてしまうが、それでも夜の時間がぽかんと空くということが時々ある。そういう時は美味いもん食いに行くに限る。マチェラータでもペーザロでも美味いもん食ったが、ここボローニャは「食の都」。グルメや食通を唸らすようなレストランがひしめいているのだ。
私はここボローニャに何度となく滞在しているので、過去に行ったことのあるいくつかのおいしいレストランがしっかり頭の中に入っている。
というわけで、いざ、出陣!!
・・・・・・。
お休みだった。
候補のレストランがことごとくお休みだった・・・。ガクッ。
あれ~?今日は何の日だ?日曜か?祝日か?
いや、普通の平日の午後8時である。
いずれにしても、オープンしていない以上どうしようもない。夕食を求めてあてもなくさまようのは嫌だったので、いったん退却。ホテルに戻り、部屋でタブレットPCを起動させ、インターネットで調査を開始した。
原因が判明した。
なんと、8月はほとんどのレストランが休業なのだ。1か月まるまる休みを取るところもあるらしい。バカンスか?
「おいおい、サービス業というのは、そういう時期こそ店を開けて商売するもんだろ!?自分たちがバカンス取ってどうするんじゃい?俺様はニッポンからはるばるバカンスに来てるんじゃゴラ!!」
などと憤慨しても、遠吠えはどこにも届かない。ここボローニャは避暑地でもなんでもないということか。
作戦変更。マチェラータでもやったとおり、ホテルのレセプション担当者に「8月でも開いていて、おいしくてお薦めのレストランを教えてちょうだい」と聞いた。担当者は「OK!任せとけ!」とばかりに市内地図をサッと広げて、お薦めレストランを紹介してくれた。うーん、頼りになる!
ホテルから徒歩約10分のそのレストランは、結構混んでいた。やっぱり他に開いているレストランが少ないからであろうか?でも、無事に最後の晩餐にありつくことができた。
楽しい旅のトリを飾ろうと、多少奮発した。前菜、プリモ、セコンドと本格的に注文し、いつものビールではなくてワインにした。
肝心の味は、期待した「最高!!」とまではいかなかったが、まあ満足。ここまでの日程を振り返り、素晴らしかった公演を思い出しながら最後の一時を過ごした。
エピローグ。
翌日早朝、午前7時の飛行機にのるため、午前4時50分にホテルをチェックアウトし、午前5時発(始発)の空港バスを待った。
5分経ち、10分経ってもバスはやってこない。日本への帰国がかかっているので、いつ到着するか分からないバスをのんきに待ち続けることは出来ない。15分経過したところでついにしびれを切らし、タクシーに切り替えて空港に向かった。
そういえば、ここはイタリアだった(笑)。 おわり
