クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2012/8/11 成田~マチェラータ

 何を隠そう、今回の往復飛行機は貯まったマイレージを利用した無料航空券だった。
 無料といっても実は巧妙な落とし穴があって、「完全無料」ではない。あくまでも基本運賃のみで、いわゆるサーチャージ代は含まれない。でもって、そのサーチャージ代がけっこう高くて、たしか7万円くらいした。(最近でこそ、当初設定料金からサーチャージ代を含めた総額を提示する良心的な会社が増えてきたが、いずれにしてもこの詐欺まがいの料金システムは、騙された感が漂う。)
 
 更に、こうしたお得チケットは、正規購入チケットよりもはるかにプライオリティが低く、粗末に扱われる。
 今回往路において、事前に自宅で手続きが可能なオンライン・チェックインができなかったどころか、なんと、私はオーバーブッキングのウェイティングリストに入れられていた。ギリギリまで座席が決まらず、成田空港カウンターで待たされ、ようやく割り当てられたのは窓側と通路側の真ん中の挟まれた席だった。
 イライラしたが、「そういうチケットなのだ」と自分に言い聞かせた。もしオーバーブッキングで搭乗を拒否されたら、机をたたき、でっかい声上げて怒鳴ってやろうと思っていたわけであるが。
 
 たまたまピークシーズンだったからかもしれないが、これからマイレージを利用される方がいらしたら、以上のリスクについてはある程度想定しておいた方がいいだろう。
 
 もっとも、この無料航空券のおかげで、面白いことが可能になった。それは、往路と復路で飛行機会社を変えることである。もちろん、同系列の航空会社グループ内に限るわけだが、マイレージ利用範囲が共通なので、こういうことが出来た。
 私は今回、往路をエールフランスの夜便にし、復路はアリタリア航空で帰ってきた。おかげで、利便性は格段に高まった。
 
 
 なんとか無事に飛行機に乗ることが出来、順調に成田を発って経由地のパリに到着。
 
 エールフランスの夜便、なんだか妙に久しぶりのような気がした。(実際は、それほど久しぶりではない。)
 つい一昨年くらいまで、私はバカのひとつ覚えのように毎度毎回エールフランス夜便を利用し続けていた。だが、そのあまりの遅延、キャンセル、不具合の多さとサービスの悪さについに愛想を尽かし、利用頻度を激減させた。
 
 パリ・シャルル・ド・ゴール空港で、イタリア・ボローニャ行きの飛行機に乗り換えるため、各ターミナル間を巡回するシャトルバスを待った。ほとんどのターミナルは徒歩での移動が可能だが、今回のイタリア方面は徒歩ではとても行けないGターミナルで、バスを利用しなければならない。
 
 早朝ということもあってか、そのバスがなかなかやって来ない。
 停留所に電光掲示板があって、「バスの到着まであと◯分」という案内がある。5分が4分になり、3、2、1・・・となってバスがやって来ると思いきや、再び「あと5分」に逆戻り。4、3、2、1・・・で、また「あと5分」に逆戻り(笑)。これが5回くらい繰り返された。他の日本人旅行者たちが「5」に戻るたびに「なんでぇ~!うそー!」と悲鳴に近い声を上げている。一方、同じく待っている欧州人は、こういうことに慣れているのか、ため息も漏らさずに黙ってじっと待っている。結局バスは20分以上遅れて、ようやくやって来た。
 
 そう。これ、なのだ。たかがシャトルバスと言うなかれ。一事が万事、これである。私がエールフランスに愛想を尽かしたのは、結局こういうことなのだ。大国ぶった誇り高き偉そうなフランスだが、所詮この程度の国なのだ。
 
 今回、飛行機の遅延はなく、予定どおりの時刻である午前9時15分にボローニャ空港に到着。バスで中央駅に向かい、そこで電車に乗り換える。
 最初の目的地のマチェラータは幹線沿いではないため、直行電車はなく、必ず乗り換えが必要となる。その乗換駅であるチヴィタノーヴァ・マルケでの乗換所要時間は15分。定時運行に全く期待が持てないイタリアにおいて「15分」というのは微妙だったが、電車はボローニャからの始発だったため、「さすがに大丈夫だろう。」と楽観した。
 
 チヴィタノーヴァには約5分遅れで到着。5分なんて、この国では「遅れ」の範疇に入らないどころか、「定時」と言っていいだろう。つまり、ここまでは順調。
 小さな駅だし、10分の乗換時間なら余裕・・・と思っていた。が・・・・。
 
 マチェラータ方面の電車が、「ない」。電光掲示板に表示もない。
 うわっ、さてはショーペロストライキ)か??
 にわかに焦りながら、時刻表を覗きこんだ。すると、すぐに事実が判明した。
「7月◯日から8月◯日までの1か月間は、この路線の運行はバスに変更になります。」
 
 バス???
 ここで自分の切符を改めて確認し直すと、確かに「バス」と書いてあった。うーむ。そうだったのか。
 
 こうしちゃおれん。バス停はどこだ?
 普通バス停というのは駅前にあるもんだろ。ところが、チヴィタノーヴァ駅にはそれがない。ウソだろ??
 私は駅員を探した。が、駅員なんていやしない。改札は無人。切符売り場窓口は「CHIUSO」(閉鎖。切符買いたければ自販機を利用する。)シエスタ中(お昼休み)か??
 
 重い荷物を担ぎ、バタバタしながら、時間が過ぎていく。出発時間まであと2分。泣きそうになる。このバスを乗り過ごすと、次のバスは1時間半後となってしまう。
 「くそったれ。こうなったら、もうここチヴィタノーヴァからマチェラータまでタクシーで行っちゃうか?」
 そんなヤケを起こしそうになったその時だった。哀れな私の様子を見ていたおじちゃんが声を掛けてきた。イタリア語なので何を言っているのか分からないが、多分「May I help you?」ってところだろう。私はただ、「マチェラータ!マチェラータ!」と涙目で訴える。
 おじちゃんはちゃんと分かってくれて、涼しい顔で、「そこの通りを真っすぐ行って、次に左に曲がったら、そこにバス停がある。」と教えてくれた。身振り手振りっていうのはすごいね。言っている言葉は分からなくても、ちゃんと理解できるのだから。私は「グラッツィエ!」という挨拶もそこそこに重い荷物を担いで走った。
 
 おじちゃんが教えてくれたバス停は、普通の市内路線バスのバス停だった。
「ここなのか?これでいいのか?」
 ハァハァ言いながら立ちすくんでいたら、すぐにバスがやって来た。運チャンに「マチェラータ??」と聞いたら、「SiSi」。
 
 間に合った!まさに間一髪だった。
 汗が一気に吹き出て、止まらない。車内はろくに冷房も効いていない。バスでの道中、私はずっと扇子で扇ぎっぱなしだった。
 
 目的地マチェラータに、‘時間的には’当初の予定どおり午後2時に到着した。
 
 降車したマチェラータ駅は閑散としていた。
 事前の下調べで、駅から街の中心部まではやや距離があり、しかも勾配のある坂を登った丘の上であることが分かっていたため、タクシーを利用するつもりだった。
 
 ・・・が。
 
 駅前にタクシーがいない。一台も。
 一緒に降車した人たちは、みな地元の人だったのか、駐車場に停めておいた車に乗り込んで、どんどんと去っていった。
 一人ポツンと取り残され、再び呆然と立ちすくむ私。
 
 「なんで?? あのさ、今、ここで音楽祭開催中でしょ?? この閑散はいったい何?? なんで旅行者オレだけなの??」
 
 どうしてよいか分からず、とりあえず待った。ひょっとして、そのうちタクシーがやってくるかもしれないという淡い期待を持ちながら。
 だが、10分経っても15分経ってもタクシーはやってこない。
 
 仕方がない。私は諦めて、徒歩でホテルに向かうことにした。重い荷物を持ち、急な坂道を登った。旧市街に入ったら、更に坂の傾斜がきつくなり、ハァハァ言いながら階段を登った。再び身体中が汗でまみれた・・・。くそー。くそー。
 途中、いい加減疲れたので、Barに入り、ヤケでビールをがぶ飲みした。一杯目をイッキ飲みし、直ちにおかわり。目を丸くする店員。ほっとけ。
 疲れと酔いでフラフラになりながら、ホテルにチェックイン。午後3時半。成田出発から約24時間が経過し、ようやく到着~。
 
 今回、ほぼ完璧とも言えるほどの最高の旅だったが、初日だけが「大苦労」だった。
 
 ま、こういうのって、ブログネタとしてはいいんだけどね!(笑)。