クラシック、オペラの粋を極める!

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2021/4/4 新国立「夜鳴きうぐいす」「イオランタ」

2021年4月4日   新国立劇場
ストラヴィンスキー   夜鳴きうぐいす
チャイコフスキー   イオランタ
指揮  高関健
演出  ヤニス・コッコス
管弦楽  東京フィルハーモニー交響楽団
三宅理恵(うぐいす)、針生美智子(料理人)、伊藤達人(漁師)、吉川健一(皇帝)、ヴィタリ・ユシュマノフ(侍従)
妻屋秀和(ルネ国王)、井上大聞(ロベール)、内山信吾(ヴォーデモン)、ヴィタリ・ユシュマノフ(エブン・ハキア)、大隅智佳子(イオランタ)、山下牧子(マルタ)     他


何度か言及しているのでご存じの方もいるかもしれないが、私がチャイコフスキーの作品で一番好きなのが、「イオランタ」だ。
悲愴よりも、チャイ5よりも、チャイコンよりも。
いとしのイオランタ。チャイコのオペラは「オネーギン」、「スペードの女王」だけじゃないことを是非多くの人に知ってほしい。こんなに素晴らしい作品があることを是非知ってほしい。
新国立劇場の公演で、そのことにたくさんの人が気付いてくれることを、私は望んでいる。

さて、その「イオランタ」だけでなく、ストラヴィンスキーの「夜鳴きうぐいす」をダブルビルで並べた今回。2作品は特色も系統も違っていて、一見すると、水と油とまでは言わなくとも、異色の組み合わせである。
そこらへん「さすが芸術監督大野和士さんのセンスが光る」と持ち上げたいところだが、残念ながらこの組み合わせの公演は過去に存在している。
2011年8月、ザルツブルク音楽祭。私は行きました。
大野さんは知っていたのかなあ。
もし知らなかったとしたら、チョイスにあたり、専門家ならではの鋭い視点が重なったということだろう。知っていたのなら単なるパクリ(笑)。

ザルツの時の指揮はアイヴォール・ボルトン
特に「イオランタ」のキャストが豪華で、タイトルロールがA・ネトレプコ。以下ヴォーデモン役にP・ベチャワ、レネ国王にJ・レリエ、エブン・ハキア医師役にE・ニキーチン。
とてもじゃないが、新国立とは比較なんか出来やしない。
ただし、この時はコンサート形式上演だった。今回、オペラ上演を敢行した新国立は注目に値する。私自身、イオランタも夜鳴きうぐいすも、本格的なオペラ上演を観たのはこれが初めて。だから、誠に喜ばしく、嬉しく、率直に感謝申し上げる。

実際、2作品を鑑賞して、非常に感激した。舞台はメルヘンチックで美しかったし、景色の動きもあって、耳だけでなく見た目でも楽しかった。
演出家はちゃんと2作品に共通する切り口を用意していて、何かというと「光」であった。
夜鳴きうぐいすでは場面や時間の経過に対して光を当て、イオランタでは主人公の心情の変化や困難を乗り越えた先の希望に光を当てた。
リモートで演出を行ったヤニス・コッコスとそのチームはいい仕事をしたと思う。相当大変だっただろうけど。

で、改めて思った。
オペラの演出って、結局こういうんでいいんだよなー、と。
読替えなんかなくたっていい。難しい思想や哲学を盛り込まなくたっていい。
見た目が美しくて、楽しくて、単純に「素晴らしい!」と思えるような舞台を作れば、それでいいじゃないか。

と言いつつ、読替演出も私は好きなわけだが(笑)。

要するに、読替えでもオーソドックスでもいいから、何か心に残るというか、考えさせられるというか、鑑賞したことでプラスになるものが見つかれば、それでオッケーということだと思う。


指揮者高関さんがリードする音楽に関しては、前半のストラヴィンスキーが面白かった。
劇的という意味においてはチャイコフスキーの作品に分があり、観客に「どっちが良かったか」と尋ねれば、イオランタの方が支持されるだろう。
だが、指揮者は「うぐいす」に潜む作曲技法の変遷をしっかりと捉え、これを丁寧に提示していた。この貢献は見逃せない。


歌手では、うぐいす役の三宅さん、イオランタ役の大隅さんが、いずれも役をしっかりモノにして聴き手を惹きつけていた。ベテラン妻屋さんの味のある歌唱も良かった。

ロシア出身で日本を拠点して活躍しているユシュマノフ。ロシアン・オペラを国内で手掛けるにあたり、彼の存在価値は大きい。美男子だし。
だが、声量に乏しいのが誠に惜しい。
もちろん大きければいいというものではないが、何を歌っているのか不明瞭な部分が多々あるのはマイナスと言わざるを得ない。