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南アフリカとニュージーランドの国歌斉唱を聞いて思ったこと

南半球のラグビー4か国対抗戦「ザ・ラグビー・チャンピンシップ」。9月7日に開催された南アフリカニュージーランドの試合中継を見、試合前に斉唱された両国の国歌を聞いて、ものすごく心に響いたと同時に、特に歌詞の部分で深く考えさせられた。

国歌というのは、こうした国際スポーツ大会で斉唱される場合は、国威発揚だったり、選手たちが自らの戦意を鼓舞させるための手段だったり、ということだろう。
だが、一般的には、国旗と同様、国家や民族の統合のシンボルということだと思う。


私が南アフリカニュージーランドの国歌を聞いて考えさせられたのは、両国共に、国歌の中に複数言語が入っていることだった。

ニュージーランドの場合、同じ曲について、まずマオリ語で歌われ、その次に英語で繰り返す。
南アフリカの場合、二つの曲が合体していて、五言語で歌われる。

すぐに察することが出来ると思うが、要するに国内に異なる民族が存在しており、国歌がそれぞれの民族をリスペクトしているのである。

その際、「原住民族」と、「後から入ってきた白人移民」という構図は、前提として必ず押さえておかないといけない。
根底には、民族、宗教や文化の違い、それから侵略と対立を繰り返した歴史が脈々と流れている。

特に、南アフリカアパルトヘイト政策による人種差別は、歴史的にも国際的にも重大かつ深刻な問題だった。そこに一人の偉大な指導者が現れて、困難に立ち向かい、これを乗り越えるべく融和を訴えた。
原住民族の黒人の間で歌われてきた曲「神よ、アフリカに祝福を」と、差別をしてきた白人の間で歌われてきた曲「南アフリカの呼び声」を、五言語による一つの国歌として合体させたのは、大統領ネルソン・マンデラ、その人だったのだ。


年月が経ち、今、ラグビーの試合会場(ケープタウン)で、観戦のために集った南アフリカの観客は、白人黒人関係なく、皆が肩を組み、胸に手を当てながら、この五言語の国歌を高らかに歌い上げていた。

なんて感動的なのであろうか!
そのあまりにも美しい光景と、南アフリカ国歌の優しい旋律に、もう涙が出そうだった。


思い起こしたのは、戦禍が止むことがなく、永遠に争い続けるかのようなイスラエルパレスチナだ。

問題があまりにも複雑であり、簡単でないことは十分に分かっている。
それに、南アフリカの場合はあくまでも国内問題であって、中東とは状況が異なるということも、分かっている。
それでも、願わずにはいられない。
南アフリカは異なる民族の融和という奇跡を起こした。
いつか、中東においても、民族、宗教、文化を乗り越え、共存する平和が訪れることを。


最後に、YouTubeなどで検索し、ぜひ南アフリカ国歌を聴いてみてほしい。できれば歌詞付き・日本語対訳付きで。本当にいい曲だから。