指揮 ジャンパオロ・ビサンティ
演出 ジョセフ・フランコニ・リー
レオノーラ役を歌うはずだったフリットリの来日がキャンセルされた。チケットの券面印刷にも名前が掲載されていたくらいだから、今回の来日公演の目玉の一人だったはずだ。
それにしても、最近のフリットリはどうしちゃったのか。ちと心配である。
一時は純正イタリアンのトップソプラノで、不動のプリマ・ドンナだった。
今回のキャンセルは病気が理由らしいが、近年ウィーンやミラノ、メトといった一流歌劇場で、キャストの中にその名を見つけることが難しくなってきている。
体調不良が長引いているのか、声の不調が続いているのか、それとも・・・。
今のフリットリの状態を確認したかったので、キャンセルは残念だ。
と言いつつ、本音を言うと、フリットリが落っこちたところで、別に大したショックはない。
声には艶と張りがあり、安定感も抜群。有名な「見よ、恐ろしい炎を」でのハイCは少々苦しいが、元々ハイトーンアクートで勝負する歌手ではないので、ここは大目に見よう。
ルーナ伯爵を歌ったガザーレは結構ご無沙汰だったが、美しく朗々とした歌声は健在だったのは喜ばしい限り。
指揮者ビサンティも大いに感心した。音楽作りがとにかく繊細だ。それでいて、それがとてもさりげない。
決して派手な効果を狙っているわけではないが、作品の魅力を十分に堪能させてくれる。
おそらくレナート・パルンボやカルロ・リッツィのような職人指揮者として、地道に着実に出世していく気がする。イタリア・オペラ正統派の系譜を継いでいくのは間違いないだろう。
演出と舞台装置については、呆れるくらいに陳腐だが、「これぞイタリア・オペラ」というのなら、何も言うまい。
ましてやバーリなんて・・・「なんて」などと言っちゃ悪いかもしれないけど、所詮はローカルカンパニーだからね。むしろ、よくメーリ様を連れてきたと褒めなければね。