クラシック、オペラの粋を極める!

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2021/2/22 都響

2021年2月22日   東京都交響楽団   東京文化会館
指揮   大野和士
合唱   新国立劇場合唱団
中村恵理(ソプラノ)、藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)
武満徹   夢の時
ブラームス   アルト・ラプソディ
マーラー   交響曲第4番


元々マーラー交響曲第2番の公演だったが、コロナのリスク回避でプログラムが変更になった。
それでも、せっかく契約した世界的な日本人歌手をみすみす手放すことはないということで、二人の出演を活かせる曲にチェンジしたわけだが、「吉」になっていたと思う。最初からこのプログラムだったとしても、私は喜んでチケットを買っただろう。

特に、ブラームスの秘蔵の名曲、アルト・ラプソディが聴けたのは嬉しい。
しかも、名歌手である藤村さんのソロで。

この曲、渋いし短いし、なおかつソリスト男声合唱を揃えなければならないため、残念ながらなかなか演奏されない。私自身、実演ではこれまでにたったの2回しか聴いたことがない。そのうちの1回は海外で聴いたものだから、要するに国内で演奏されるのは稀少ということだ。
残念としか言いようがないが、今回、代替プログラムとしてこの曲をすかさず据えた大野さん(あるいは事務局のお手柄?)の機転と計らいはナイスだ。
(ちなみにであるが、私は大学生の時、オケでこの曲を演奏した経験がある。)

期待どおり、藤村さんのしっとりと染み渡るような歌唱が秀逸。あたかも最初から「藤村さんとなら、ぜひこの曲を」と用意して作り上げたかのような、万全の仕上がり。
彼女が声を発した瞬間、会場の空気が一変した。そこにドイツから郷愁を誘う風が吹き込む。私は目を閉じて、その冬枯れた風の感触を確かめる。わずか10分くらいの瞑想。静かな、美しい時間だった。


メインのマラ4は、今度は指揮者大野さんの手腕が遺憾なく発揮された好演。冬のドイツの厚い雲に覆われた景色はここで様変わりし、眩しい日差しによって視界良好、鮮やかで明晰なマーラーが展開した。

大野さんはやっぱり天才型というより秀才型、頭脳派なんだろうな、と思ってしまった。
スコアをじっくり読み込み、解析して、作品を整理し、秩序を作る。理路整然と。そうしたことに長けている指揮者だと改めて感じた。

作品によって、指揮者の解析能力が重要となる曲、あるいはインスピレーションや感性が重要となる曲、分かれると思う。少なくともこのマラ4に関しては、完全に大野さんに利した作品であった。
代替の曲を探さなければならなかった時、もしかしたらすぐにこの曲が候補に浮かんだのではなかろうか。そんな気がする。彼は2016年11月にも都響と演奏していて、好感触が残っていたはずだ。

災い転じて福となす。
「復活」を楽しみにしていたお客さんからすれば、非常に残念なことではあったが・・。