指揮 大野和士
なるほど、就任記念と銘打つだけのことはあって、大野さんの色が出ている。第一楽章はちょっと空回りしていたような気がしたが、三楽章、四楽章と緻密な音楽作りが発揮されていたと思う。大野さんらしいディティールのこだわり。オーケストラもよく応えていた。
ただ、そうしたディティールのこだわりによって音楽全体の構築性がぼやけたような印象を受けた。
マーラーというのはつくづく厄介な音楽だ。作曲家自ら楽譜に細かい指示を付与し、指揮者のフリースペースを狭めておきながら、実際に指揮者が忠実にディティールの再現にこだわっていると、いったいその音楽は何を言い表したかったのかが見えにくくなってくる。
断っておくが、私は基本的には大野絶賛支持派。これまで何度も胸をすくような爽快な演奏を体験している。今回の演奏にしたって、たまたま私の感性と合わなかっただけかもしれない。
ま、こういうこともあるさ。