クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

スカラ座の「トスカ」

昨年12月にプレミエとなったミラノ・スカラ座上演「トスカ」、NHK-BSで放送された収録映像を視聴した。
このトスカは、今年9月、同劇場の来日公演の演目となっている。

まずその今年9月の来日公演だが、驚愕の価格設定。
最高S席が6万9千円! おいおい、7万円がもう間近じゃんか。まじかよ。(シャレか?)
最低ランクF席が2万円。
この席種はおそらく発売と同時に瞬殺売り切れ、運のいい人しか手に入らないから、E席2万8千円、D席3万6千円あたりも覚悟しておかなければならないだろう。

こうなってくると、庶民のオペラファンにとっては、完全に高嶺の花だわな。

ちなみに、昨年11月のマリインスキー劇場来日公演「スペードの女王」のS席が4万2千円、今年6月のパレルモ・マッシモ劇場来日公演が3万2千円・・・。

しかも、肝心のキャスト、現地のプレミエで歌ったトスカ役のネトレプコとカヴァラドッシ役のメーリは、二人とも来日しない。これは飛車角落ちと言わざるを得ない。
主催のNBSは必死に来日公演のトスカ役エルナンデスについて「ミラノ上演にも出演!」と宣伝を煽っているが、あくまでもセカンドキャストとしてだからね。
ミラノでのシーズン開幕の新演出上演に、ネトレプコとメーリという世界最高の両歌手を揃えてきたというのは、さすがは名門スカラ座であった。
その二人がそのまま来日公演のキャストに名を連ねるというのなら、まあ、あの値段も仕方がない気もするが、そうじゃないんだ。そうじゃなくて、あの値段なんだ。これは、よーく肝に銘じた方がいい。

さて、放映されたトスカに話を戻そう。
シャイー、またまた「初演版」なる物を持ち出してきやがった。3年前の「蝶々夫人」もそうだった。
この時、私は「初演版の意義について」というタイトルで、ブログ記事を書いた。

https://sanji0513.hatenablog.com/entry/34538993

要するに、プッチーニが良かれと思って手直ししたのに、どうして手直し前のオリジナルを持ち出してくるのか、それはプッチーニの最終的な意図と違うのではないか、というのが私の意見だ。
しかし、監修の立場にあるシャイー自身が初演版を上演することに意義があると思っているから、そこに文句をつけても仕方がないのだろう。

もっとも、このトスカに関して言えば、それほど違和感はない。何度も聴いて完全に耳に馴染んている私なんかは相違箇所に気付くが、普通に聞き流す人も多いかもしれない。

D・リヴェルモア(リヴェルモーレ)の演出は、舞台機構を大きく活用し、せり上がりや回転舞台、プロジェクションマッピングなどを駆使して、とにかくスペクタクルに仕上げている。
こういう見た目に豪華な舞台を喜ぶ輩は、多いだろう。
それまでの旧プロダクション(リュック・ボンディ演出)は、酷かったからね。メトやバイエルンとの共同演出だったが、いずれからも散々の酷評の嵐だった。反省し、劇場側がスペクタクル性を求めたのかもしれない。

いずれにしても、来日公演では観客をあっと言わせるに違いない。そういう意味では、見ものではある。

主役のネトレプコ
うーん・・・。
なんかさあ・・・キムタク化している。
分かるよね。つまり、「何の役をやってもキムタク」ってやつ(笑)。
今のネトレプコはそれ。

こうなると、何だか期待が薄れてくる。「ネトレプコ、トスカをどう歌い演じるのだろう?」ではなく、「ネトレプコ、どうせ、いつもと同じだよね」になっちゃうのだ。

ただし、そうやって「何を歌っても・・」でありながら、唯一無二の絶対評価を確立させたアーティストがいる。

マリア・カラスである。

もしかしたら、ネトレプコは「キムタク化」ではなく、「カラス化」の道を歩んでいるのかもしれない。

最後に、またまた来日公演について。
宣言しちゃいます。私、行きませんからねー。
トスカと椿姫のために数万円を出すつもり、無し。
昔、ムーティ音楽監督だった時代は、ムーティ自身がスカラ座として相応しい自信演目をちゃんと選んでくれた。演目の中にスカラ座の気概を大いに感じたものだ。
今回の来日公演に、そうした気概はまったく感じられない。

ということで、鑑賞記書けませんから、よろしくー。