クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2024/3/24 イースター・フェスティバル1 ベルリン・フィル

2024年3月24日  バーデン・バーデン・イースター音楽祭1    祝祭劇場
指揮  トゥガン・ソヒエフ
管弦楽  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヤン・リシエツキ(ピアノ)
ベートーヴェン  ピアノ協奏曲第3番
ブルックナー  交響曲第7番

 

ソヒエフ指揮のベルリン・フィルを、初めて聴く。
ソヒエフは昨年に来日し、ウィーン・フィルを振った。今度はベルリン・フィルだ。
(間を挟む形で、N響も振ったけど(笑))
これはもう、世界の2大オーケストラを制覇して、名実共にトップ指揮者の仲間入り、ということでよろしいのではなかろうか。少なくとも私はそのように見たい。ソヒエフがこれからのクラシック界をリードし、背負って立っていく。そういう逸材であろう。

・・と、思い切り持ち上げたところで、さっそく演奏について。


昨年のウィーン・フィルの時は、一歩引いてオーケストラを立てている感じがしたが、今回は天下のベルリン・フィルを臆することなく積極果敢に導いている姿が、実に凛々しい。
ソヒエフは、事前の準備によって、どういう音楽を構築しようかという全体の設計図が完成されている。それをタクトによって細かく指示する。方向性が明確なのだ。で、ベルリン・フィルがこれに完璧に応える。両者によるプロフェッショナルな濃密関係。
言うまでもなく出てくる音は、思わずため息の豊穣魅惑サウンド

今年はブルックナー・イヤー。(生誕200年)
そういう記念年にベルリン・フィルの7番を聴けて、良かった。


ソリストのピアニスト、リシエツキについて。
ポーランド系のカナダ人。15歳にてドイツ・グラモフォンと専属契約したという神童ぶりが、かつて話題になった。まだ20代だが、世界を飛び回って大活躍中のスター・ピアニスト。
日本にも来たことがあって、昨年の東京・春・音楽祭に出演しているのだが、私はちょうど海外遠征と重なり、聴けなかった。彼の演奏を聴くのは初めてだ。

若くて容姿端麗ということもあり、ラン・ランみたいに華やかなピアニズムをつい想起してしまうが、聴こえてくる音だけに集中すると、非常に注意深く曲想を練りながらベートーヴェンに迫ろうとするアプローチが見える。
一方で、従来の型にはまらない、型を突き抜けようとするアグレッシブな姿勢も伺える。あたかも新しいベートーヴェン像を打ち出そうとしているかのようだ。若者らしい志向。
ただし、まだ確立しているとは言い難い。そこら辺は、これから将来いくらでも埋められそうな予感を漂わせている。

あと、コンチェルト一曲だけでは、そう簡単に本質を掴めないというのもある。是非、次の機会では、リサイタルで聴いてみたいとも思った。

2024/3/24 バーデン・バーデン1

早朝明け方にホテルをチェックアウトし、ドレスデンを離れ、飛行機でフランクフルトへ。その後、電車に乗り換えて、バーデン・バーデンにやってきた。昨年に続いての再訪。目的は、この地で毎年この時期に開催される「イースター音楽祭」である。

この音楽祭は、ホスト・オーケストラがベルリン・フィル(※)ということで、世界にその名を知らしめている。天下のベルリン・フィルが、コンサートだけでなく、オペラのためにオーケストラ・ピットに入るというのも、売りの一つ。
(※ ただし、現在の出演契約は2025年(来年)をもって終了し、2026年はロイヤル・コンセルトヘボウ管が招かれることが決まっている。ベルリン・フィルは再びザルツブルクに行く。)

昨年は、R・シュトラウスの「影のない女」1公演だけを狙って、ここに来た。今回は3泊し、オペラを含む3公演を鑑賞予定だ。

ベルリン・フィルが超一流であることについては、今さら言うまでもないことだが、昨年11月の来日公演を鑑賞して、改めて「やっぱ、すげー!!」と感服した。天下一品、唯一無二。今回、その演奏を三日連続で三つのプロを聴けるのだから、自分の音楽鑑賞ライフの中でもかなりのビッグイベントとなろう。


飛行機は遅延せず、電車への乗換えと運行も問題なく順調。予定のとおり、お昼頃にバーデン・バーデンに到着。昼食を取ってホテルにチェックインしたら、本当は街を散策しようと思っていたが・・・。

到着時、天気は雨。しかも、めっちゃ寒い。気温は8度くらいしかない。冬だな(笑)。

散策中止~。
ホテルの中で、下着類の洗濯と、ここまでの旅行記の下書き、そしてお昼寝で過ごした。

温泉施設にでも行ければよかったのだが・・。
昨年行ったので、今年は「いいや」と思い、水着を日本から持ってこなかった。

2024/3/23 ザクセン州立歌劇場 影のない女

2024年3月23日   ザクセン州立歌劇場
R・シュトラウス   影のない女
指揮  クリスティアンティーレマン
演出  ダヴィッド・ベッシュ
エリック・カトラー(皇帝)、カミッラ・ニールント(皇后)、エヴェリン・ヘルリツィウス(乳母)、アンドレアス・バウアー・カナバス(伝令)、オレクサンドル・プシュニアク(バラック)、ミーナ・リーサ・ヴァレラ(バラックの妻)、ニコラ・ヒッレブラント(神殿の敷居の守護者)    他

 

ティーレマンドレスデンの首席指揮者としての契約は今シーズン限りで、いよいよそのピリオドが迫ってきた。本プロダクションは、そんなティーレマンが振るゼンパー・オーパー最後の新演出。彼の置き土産となるプロダクションだ。この日はプレミエ(チクルスの初日)。


いやー・・・もう・・・。

言葉が出ないくらい、猛烈に感動した。クライマックスは涙に咽いだ。

私はティーレマンが振る「影のない女」を過去に2度ライブで聴いている。
2011年のザルツブルク音楽祭、そして2019年のウィーン国立歌劇場
収録された映像も視聴したし、ティーレマンの音楽、この作品に対するアプローチがどのようなものなのかは、何となく分かっていたつもりだった。それでも圧倒的な音の洪水、炸裂に、ビリビリと痺れ、打ち震えた。

もちろん、私が大好きな作品だから、ということもある。一番好きなオペラなのだ。曲に感動している部分は間違いなくある。

はっきり言おう。
この作品「影のない女」に出会えたのは、私の人生における最大級の「喜び」。
そして、ティーレマンが振る3つのプロダクションを鑑賞することが出来たのは、私の人生における最大級の「誇り」。


歌手は、私にとってお馴染みの人たちばかり。ほとんどの出演者について、同じ曲の同じ役を過去に聴いている。
それでも、女性陣の3人、C・ニールント、E・ヘルリツィウス、M・L・ヴァレラは、諸手を挙げて絶賛し、ひれ伏すしかない。

M・L・ヴァレラについては、昨年のバーデン・バーデン・イースター音楽祭でも同役を聴いた。
この時、「不調だが、頑張って出演する」という事前告知が入った。「いやいや不調に聴こえない。全然問題ないじゃないか。」と思ったが、今回のドレスデンの公演を聴いて、「なるほど、本調子だとこんなにすごいのか!」と感嘆した。
ベルベットのような声質。美しく、光沢があり、加えて強靭さもある。
声域は異なるが、なんとなく往年の名メゾ、マリアーナ・リポヴシェクを彷彿とさせた。(私はリポヴシェクの歌声が好きだった。)


バラック役のプシュニアクは、今回始めて聴くということで、注目した。ウクライナバリトン歌手。ストレートな歌声である。キャラはあまり感じられない。良い歌手だと思うが、これからエリート街道を歩んでいくかどうかは、現段階ではよく分からない。


D・ベッシュ演出について。
皇帝と皇后のいる魔界において、シンプルに白い巨大なカーテンを設置し、そこにプロジェクション映像を使ってイメージを映し出す手法が目を引いた。映像が、とても美しかった。
また、脇役でしかない鷹を大型の模型にし、羽ばたかせて登場させ、キープレーヤーの役を担わせていたのも大きな特徴。もしかしたらこの鷹が、本来は舞台に登場しないカイコバートだったのかもしれないという推測が成り立つ。いずれにしても、グッドなアイデアで、良い演出だったと思う。


カーテンコールはお祭りと化した。絶賛の嵐だった。
歌手たちへのブラヴォー。そしてティーレマンへの盛大なブラヴォー。

ドレスデンの人たちよ。
エストロはもうすぐ去ってしまうのだよ。本当にそれで良かったのかい?
ザクセン州の文化芸術政策上の失敗なんじゃねーの? もう今さらだけどさ。

2024/3/23 ドレスデン

パリを離れ、次の目的地はドイツ。いったんベルリンに飛んで、そこで鉄道に乗り換え、ドレスデンに向かう計画。残念ながら、パリからドレスデンへの直行の飛行機便はなかった。

この「ベルリンに飛び、鉄道に乗換えて」というのが、クセモノ。旅行前からずっと心配の種だった。
というのも、このところドイツ鉄道DBがやたらとストライキを連発していたからだ。
それに、運行したとしても、遅延が多い。とにかく悪名名高いDB。

私は保険を掛けた。
ドレスデン行きの鉄道チケットに加えて、更に長距離バスも予約しておいた。二重予約・二重料金だが、これは安心料。万全の対策を取ったのだ。それに、バスの料金はそんなに高くない。

そうしたら、今度はパリ発ベルリン行きのエール・フランス便が遅延。ベルリン到着が約40分遅れた。
この影響で、鉄道への乗換時間が厳しくなった一方、バスであればまだ比較的余裕があった。
(飛行機の遅延の可能性を考慮した上でバスの予約をしたのは、当然のこと。)

ということで、バス利用に急遽切り替え。

もし保険をかけていなかったら、飛行機が遅延した際、かなり焦ったと思う。
ファーストチョイスではなかったが、バスは空港からドレスデンへ直行だったし、結果的に良かったのであった。


午後2時ドレスデン到着。
この日のオペラの開演は、午後4時。
とにかくオペラが観られればそれでいい。観光は最初からするつもりがなかった。オペラに間に合ったわけだから、すなわちオーケー。


ドイツに着いてみたら、寒かった。天気は雨のちくもり。
パリでは連日天気が良くて、日中の気温は18度くらいと暖かかったのに、こっちは最高気温が11度。コートが必要。まあ、ドイツらしい天気と肌寒さと言えば、そのとおり。


ところで、話は変わる。
この日オペラを観終えたら、翌日にはすぐに移動でここを離れるのだが、計画段階ではそのままここに留まり、もう一泊するという選択肢があった。
翌日、ドレスデンではシュターツカペレ・ドレスデンのコンサートがあったのだ。
指揮者は、大巨匠のヘルベルト・ブロムシュテット

ただし、ブロムシュテットはご承知のとおり、高齢でこのところ病気や怪我などにより、公演キャンセルが続いている。

結果としてSKDのコンサートをパスし、計画に組み込まなかったが、ブロムシュテットがここで出演するのかについてはずっと注目し、動向をチェックしていた。出演するということは、つまり今後のコンサート活動再開に明るい兆しが見えるということなのだから。

10日くらいまでキャンセルの情報はなく、公式HPにも巨匠の名がずっとクレジットされていたので、「これは大丈夫か!? もしかして復活か!?」と見ていたが、日本からの出発前日である17日に改めてチェックしてみたところ、指揮者がマンフレート・ホーネックに変更になっていた。

ああ、やっぱりダメだったか・・・。
これは秋の来日、厳しいかもね・・・。

 

電車のトラブルに見舞われる

もうさあ、何で私は旅行でこう毎回トラブルに遭遇するんだろうね。
何なんだよ、いったい。マジで・・・。
3月22日、「シモン・ボッカネグラ」公演の行きと帰りのこと。


その1
空港近くのホテルからパリ・オペラ座バスティーユ劇場に向かっている時のことだった。
近郊鉄道R.E.Rで市内に向かい、北駅にて地下鉄メトロに乗り換える際、有効なはずの所持切符が突如自動改札の機械にはじかれてしまい、ドアが開かず、通り抜けることが出来なくなってしまった。
(※ 地下鉄メトロ内であれば、乗換えにあたって改札を通ることがなく、フリーで乗り継ぐことが出来るが、R.E.Rとメトロの相互間では、改札を通過しなければならない。)

パリでは近年チケットの電子化、ICカード方式の導入を図っているが、私が購入した「パリ・ヴィジット」という期間内乗り放題チケットは、今もまだ紙の磁気カード。この磁気データの読取りが不良になってしまったと思われる。

対処としては、駅の窓口にて不良チケットの磁気データを直してもらうか、もしくは新品と交換してもらうかだが、この北駅で係員のいる窓口、あるいはインフォメーションセンターが周囲を見渡しても見つからない。改札は完全無人化のため、駅員はいない。

現在午後6時半。バスティーユ劇場での開演時間が午後7時30分。北駅から劇場の最寄り駅までメトロでだいたい15分くらいなので、その移動時間を考えれば、ここでの猶予はだいたい40分くらい。それまでにトラブルの解決を図る必要がある。とにかく、駅員、窓口、もしくはインフォメーションセンターを探すしかない。

最初は速歩きで駅構内をウロウロと探し回ったが、北駅というのは国鉄のターミナルも備わる巨大駅で、デカくて簡単に見つからない。
そんな主要駅なら、窓口やインフォメーションセンターくらい普通にあって当然と思われるのに、これが絶望的に見当たらないのだ! なぜ!?

もちろん、人に聞いた。構内にあるお店の店員とかに。英語が話せない奴が多いから、スマホの翻訳機能で用件を入力し、フランス語にして、それを提示して聞いた。
だが、彼らの答えは実に要領を得ない。
「分からない」「あっちだ」「上の階だ」「たぶんこっちだ」・・・やれやれ。
まあ、店員だしな。駅員じゃないんだから。

時間が刻一刻と過ぎ、だんだんと焦ってくる。小走りになり、やがてマジで駆けずり回った。頼むぜよ、もう俺、いい年なんだぜ・・。

ようやくようやくオフィスを発見。ところが、そのオフィスはなんと改札の外にあった。私は改札が抜けられないので、そこにたどり着くことが出来ないのだ。

こうなったらもう、恥も外聞もない。私はその窓口方面に向かって、叫んだ。

「スィル・ヴ・プレーー!!!(プリーズのフランス語)  ヘルプ・ミーー!!!」

近年、これほど大きな声を出したことは記憶がない。
係員が気付いてくれ、こちらにやってきた。事情を話し、改札のドアを開けてもらい、オフィスに通され、そこでカウンターの案内番号の紙を渡された。
つまり、順番を待てと・・・。

オペラの開演時間(19時30分)が近づいている。この段階で、18時50分。待たされて、19時10分を過ぎたら、もうアウトだ。イライライライラ・・・。

19時5分、自分の番が回ってきた。待たされた15分は永遠のように長く感じられた。もうダメかもと諦めかけた。新たなチケットをもらい、ダッシュでメトロのホームへ。
19時25分、劇場到着。間に合ったぁ~・・・。いやー良かった。


しかーし、トラブルはこれだけではなかった。


その2
今度は帰り。やっぱり北駅だ。ったく呪われてるな、この駅。
ホームで空港方面の電車を待っていたが、なかなかやってこない。
普通はだいたい10分くらいの間隔で運行しているのだが、それ以上に待たされる。

オペラが午後10時半に終演となって、北駅に午後11時くらいだから、最初は深夜に差し掛かって、本数が減っているせいかも、と思った。

すると突然、構内の運行案内のモニター画面が赤色にチェンジ。フランス語による館内アナウンスが流れると、言葉を理解するフランス人たちが一斉にホームを離れ始めた。
英語のアナウンスは無し。呆然と立ちすくんでいるのは外国人だけだが、私も含め、すぐに状況を察知し始める。
トラブルによる運行停止だ。間違いない。

パリ市内と空港は、近郊鉄道R.E.Rの空港B線のほか、シャトルバスなども結んでいるが、こんなに夜遅くに今からバスの発着場所に移動しようという気はまったく起きない。(そもそも、こんな時間に運行しているのかさえも知らない。)

手段はただ一つ。タクシーだ。もうそれしかない。

翌日朝は早い。だからこそ空港に近いホテルを取った。こんなところでグズグズして、就寝が遅くなるのは嫌だ。

幸い北駅はパリの主要駅の一つなので、外に出れば、いくらでも待機している車がある。
もう一つ、良い点としては、空港とパリ市内において一律料金を設定していること。どのタクシーに乗っても、どういうルートでも料金は均一だ。(56ユーロ)
このため、ボッタクられる心配はない。

56ユーロは、痛いといえば痛い。日本円でおよそ9千円である。
でも、こういうトラブルの時にこそ、お金というのは価値を発揮する。惜しんではいけない。ここぞとばかりに使って、解決を図るのだ。普段はなるべく公共交通機関を利用し、ケチってタクシーを使わないが、だからこそこのタイミングで使うべきなのだ。

余計な出費だったが、こうして無事にホテルに到着した。
なんだかんだいって、タクシーは快適だ。ホテルの玄関まで送迎してくれるし。
だから、もう過ぎたことだし、「やれやれ、参った」などと決して悔やまない・・・。


トホホ・・・(泣)。

2024/3/22 パリ・オペラ座 シモン・ボッカネグラ

2024年3月22日   パリ・オペラ座   バスティーユ劇場
ヴェルディ  シモン・ボッカネグラ
指揮  トーマス・ヘンゲルブロック
演出  カリスト・ビエイト
ルドヴィク・テジエ(シモン)、ニコル・カー(アメーリア)、ミカ・カレス(フィエスコ)、チャールズ・カストロノーヴォ(ガブリエーレ)、エティエンヌ・デュピュイ(パオロ)    他

 

音楽的に秀でた演奏だった。これはなかなかの名演である。
やはり、キャストがいいのだ。
キャストが良ければ、総合的なレベルも向上して、結果素晴らしくなる。これ、オペラにおける自明の理。さすが天下のパリ・オペラ座

タイトル・ロールのテジエ。 ザ・主役!
フランスが誇る世界的な名バリトン。朗々とした歌唱、オーラのある貫禄と存在感。
見た目はちょっと老けたかな。おっと失礼なことを。

アメーリアのN・カー。
コロナが開けて昨年から海外鑑賞を再開したけど、そこから彼女の出演オペラによく当たる。
昨年5月にウィーンの「カルメル派修道女の対話」のブランシュ。10月にスカラ座の「ピーター・グライムズ」のエレン。
実は再来月の5月にウィーンに行く予定なんだけど、今度はそこでグノー「ファウスト」のマルグリート役を観る。
これだけ当たるということは、別に私との相性じゃなくて、彼女がそれだけ各地の一流劇場からオファーを受け、しっかりと活躍している、ということに他ならない。

そのカーが、今回抜群に良かった! 昨年のスカラ座でのエレンは、それほどのインパクトは感じなかったのだが、今回は見違えた。声に輝きと生命力が感じられた。私の評価は一気に瀑上がりになった。

ちなみに、パオロ役のデュピュイは彼女の旦那さん。デュピュイは6月のロイヤル・オペラ・ハウス来日公演でリゴレットを歌う予定。そのデュプイのパオロも素晴らしかった。リゴレットは期待が持てるぞ。


指揮のヘンゲルブロック。彼の指揮による公演の鑑賞は久しぶり。
これまでの彼のキャリアからヴェルディのイメージが沸かなかったが、いやいや、なかなかどうして。タクトも音楽も熱かった。オーケストラのコントロールも盤石、抜かりがない。

ビエイトの演出については、「まあ、特に」って感じか。
現代的な読替えは当然のこととして、特に目から鱗が出るような斬新さはなかった。戦艦の艦内を思わせるような3階建ての巨大なオブジェを回り舞台で回しながら、その周辺で人間ドラマを作っていくのだが・・なんだかそれだけという感じがしなくもない。


最後に、もう一つ特筆すべきこととして、パリ・オペラ座の合唱が本当に迫力があって素晴らしかった。この作品で思わず合唱に聴き入り、魅了されるというのは、あまりないんじゃなかろうか。

2024/3/22 パリ3

パリにはもう一泊するが、いったんここで泊まっていたホテルをチェックアウトした。翌日早朝のフライト出発を見越し、シャルル・ド・ゴール空港に近いホテルを予約したためだ。

この日の夜は、オペラ座で「シモン・ボッカネグラ」の鑑賞。オペラを観終わってからホテルに向かってチェックインしようとすると、かなり遅い夜中になってしまう。そうした時間に見慣れない場所で重たい荷物を持ちながら、ウロウロとホテルを探すのも嫌。
このため、日中のうちにまずホテルに入っておき、夕方にオペラ鑑賞のために市内に戻り、観終わってまた空港方面に戻る、という移動を繰り返すことにした。

シャルル・ド・ゴール空港と市内(例えば北駅までの場合)は、近郊線R.E.Rの利用でおよそ35分。時間的にはそれほど遠いという感じではないが、料金は結構高い。片道11.45ユーロ、日本円で1800円くらいする。一日に「行って、戻って、また帰って」と3回利用すれば5400円で、意外とバカにならない。
このため、最初のパリ到着の時点で5日間の乗り放題チケット「パリ・ヴィジット」を購入した。その間に、ミラノに出掛けたことによる空港-市内の往復もあったので、トータルでは確実に安上がりになる。
(その後、実はこのチケットでトラブルに見舞われてしまうのだが、それはまた次の記事にて。)


この日の観光でまず訪れたのは、「アトリエ・デ・リュミエール」。
2018年にオープンしたデジタル・アート・センター。プロジェクション映像、照明、音楽を駆使した空間アート展示。建物は19世紀の鋳造工場を改装したものだという。最近こういうデジタル・アート、流行りだよね。

事前リサーチしたら、「週末はウェブ予約が望ましい」という情報があったので、予め日本で予約しておいた。17ユーロ。

展示のテーマ内容は「エジプト古代遺跡」、「オリエンタリズム」、「Foreign Nature」の3種類。
オリエンタリズムは、アングルやドラクラワといった画家が描いたオリエンタル絵画を発展的に見せる展示。また、Foreign Natureは、日本語にすると「外国の自然」だが、より人工的、幾何学的、空想的な創造作品であった。


これはまさに「ザ・体験」。デジタル映像技術の創造性、素晴らしさに酔いしれた。壁だけでなく床にも映像が施されるため、異次元感がより増長する。
かなりお勧めかもしれない。パリに行かれる方は是非!
と言いつつ、別にパリで体験しなくても、東京にもデジタルアート展覧会はあるけどね。


次に、パリに行ったらどうしてもこの目で確認しておきたかったこと。
それは火災により構造物のかなりの部分が焼け落ち、喪失してしまったノートルダム大聖堂、再建の現状である。
被災直後は、マクロン大統領が「パリ・オリンピックまでに再建する!」と息巻いたが、さすがにそれは無理だった。
それでも、今年中の再オープンを目指し、現在急ピッチで工事中。その状況がこちら。


以上で、今回の旅行のパリ観光はすべて終了。昼食を取り、上記のとおりこの後、空港近くのホテルへ向かった。