2019年2月7日 新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール
指揮 ヒュー・ウルフ
重松希巳江(クラリネット)
定期の第600回公演。
いかにも記念公演らしく巨大な作品で華々しく飾るかと思いきや、個性的でちょっとこだわりのプログラム。指揮者だって、普通の客演指揮者。
このさり気なさ、個人的に好感。私はこういうプログラム大好きなので、嬉しい限り。
しかし、世間的には、まあなんというかアレなんだろうな・・。
客入り悪し。記念公演の特別感が霞む。
別にマニアックじゃないと思うけどなあ・・。
ま、いいじゃないか。わが道を行け、新日本フィル。
コンチェルトのソロを担当した重松さん(同フィル主席)の演奏が良かった。
技術が安定していて、低音から高音まで楽器の鳴りが非常にいい。しかも音色の変化は自由自在。クラリネットの魅力が満載だった。
驚いた。新日本フィルの団員に、こんなにも上手い人が潜んでいたのか。
普段はオケ奏者の一員なので、入退場の仕方、カーテンコールでのお辞儀などが、どこかぎこちなくて初々しいのも、微笑ましい。聴衆だけでなく、仲間のオケ奏者たちも「いいぞ!重松さん」と笑顔で温かく拍手で称える光景も、これまた微笑ましい。
市民のためのファンファーレと交響曲第3番は、親子のような作品だ。コンチェルトを挟み、第4楽章、シンフォニーの中で再現される構成は、圧巻。しびれた。
ヒュー・ウルフは、作品を完全に手中に収めた上で、非常に丁寧な表現力が見事。開放感があり、スコアの設計の抽出も的確。「お国物」の一言で片付けるのはもったいないほどの演出力だ。
才能のある指揮者だと思うが、指揮者としてのインパクトというか、スター性に欠ける印象が残ってしまうのが惜しい。
なぜだろうか。若いからか。アメリカ人だからか。
いかんいかん。そういうのは、本人の音楽性とは関係なく、我々の色眼鏡の問題だ。
でも、過去に2回、この人が振った公演を聴いているにも関わらず、ほとんど覚えていないんだよなー。
聴衆の記憶に残させるインパクトは、やっぱり重要なのだ。
ウルフさん、お仕事済んで、とっとと帰国しちゃったかしら。いよいよこれから始まるクルレンツィス君の公演でも覗いてみたら、スター性について何かヒントが得られるかもしれないのに(笑)。
すまん、大きなお世話だな。