2013年3月25日 新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール
指揮 下野竜也
セリーヌ・モワネ(オーボエ)
バッハ おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け
R・シュトラウス オーボエ協奏曲
ベートーヴェン 交響曲第7番
この日の公演のお目当ては、オーボエ協奏曲のソリスト。指揮者でもベト7でもありません。ソロを務めたのはザクセン州立歌劇場のソロ・オーボエ奏者様。
2010年の秋、ドレスデンでR・シュトラウスのオペラ「ダフネ」を観た時のことだった。舞台の上の歌劇もさることながら、オケピットの中から聞こえてきたオーボエのうっとりするようなソロの音色に「うわっ!上手ーーい!」とため息をついたことをはっきり覚えている。
「さすが天下のドレスデンだわい」と感心しながらピットの中を覗きこむと(最前列の席だった)、麗しの音色の持ち主はブロンドの美人さんだった。
別にすかさずチェックしたわけでもなく、名前も知らないままだったが、今回の新日本フィルの公演案内で「ザクセン州立歌劇場の・・・」と書かれた紹介を見つけた瞬間、「ああ、あの人だ!」と記憶が蘇った。すぐさまチケットを手配したのは言うまでもない。別にお目当ての理由が美人だから、というわけではありません。完全には否定しませんが・・・。
プログラムのプロフィールを読むと、2011年のウィーン・フィル来日公演にも客演で参加していたとのこと。
そうか、あの時・・・。
原発事故の影響で、あの時、外来演奏家の来日は軒並みキャンセル続き。ウィーン・フィルも例外ではなく、少なからずの団員が日本へのツアーの帯同を辞退。補充要員の一人として、彼女に白羽の矢が立ったというわけか。
非常事態の中、天下のウィーン・フィルの招きとはいえ、意を決してわざわざ来てくれた御方である。そういうことなら、なおさらしっかりと襟を正して聞かねばなるまい。
そのモワネ女史のオーボエ、安定した技術と美しい音色で聴衆を魅了した。高音はキラキラと輝き、低音は太く芯があるが、全体的にはとてもまろやか。それがまたシュトラウスの晩年の悠々とした音楽にマッチしていた。
下野氏のタクトと伴奏のオケもとても冴えていて、充実したシュトラウスを堪能。
それにしても、今月はシュトラウスのコンチェルトを二曲も、しかも共に世界的な奏者を迎えて聞くことが出来、シュトラウスマニアとしては嬉しい限りであった。
ということで、メインのベト7は完全なオマケ・・・と思っていたのだが、これがまたなかなかグッド。快調なテンポ、元気が良くて生の歓びに満ち溢れたベートーヴェン。
巨匠によるいぶし銀の演奏もいいが、若くて溌剌とした演奏もまたよろし。
指揮者の解釈によって、あるいはオーケストラによって、様々な色合いに変化を見せる音楽。今さらながら、クラシックって奥が深いですねー。