クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2016/10/25 ウィーン国立 ナクソス島のアリアドネ

2016年10月25日   ウィーン国立歌劇場   東京文化会館
指揮  マレク・ヤノフスキ
演出  スヴェン・エリック・ベヒトルフ
ステファニー・ハウツィール(作曲家)、ステファン・グールド(バッカス)、ダニエラ・ファリー(ツェルビネッタ)、グン・ブリット・バークミン(アリアドネ)、マルクス・アイヒェ(音楽教師)   他
 
 
職場の同僚たちに2万5千円のチケットを見せたら、仰天された。「その値段はカテゴリーの6番目で、S席は6万以上だ」と言ったら、絶句された。「今回、そういう公演に3演目行く」と言ったら、首を横に振られた。
その同僚の中に、先日プラハ国立歌劇場「ノルマ」に一緒に行った(連れて行ってやった)自称初心者クンがいて、「DVD5枚買って、自宅で見た方がいいんじゃね?」と言ってきたので、一言「見解と思想の相違」と答えてやった。
 
確かにチケット代は、私も高いと思う。普通のサラリーマンにとって痛手の値段だ。
だが、オペラ観賞を趣味とする人間にとって、この機会は何よりも貴重。
国内で世界最高級のオペラを体験する機会は、これしかない。外来引っ越し公演にすがるしかないのだ。後は、本場の公演を観に海外に行くか、新国立劇場二期会などの国内カンパニーで我慢するか、道はそれしか残っていない。
ブログタイトルのとおりクラシック音楽・オペラの道を極めようとする私にとって、国内カンパニーにも目を向け、海外にも足を運びながら、なおかつ外来公演の高いチケットを買うことは、自分の人生への投資であり、当然のこと。わりいけど、こっちは命を賭けているんでね。
ということで、頼むから放っておいてくれたまえ。
 
えー、前置きが長くなりましたが、アリアドネ。嗚呼愛しのアリアドネ
チケット代が高いだけのことはある。なんという高水準の上演であろうか!
 
と言っておいてなんだが、これはウィーン国立歌劇場における最高水準ではない。
私は4年前にこのアリアドネの現地ウィーン・プレミエを観たし、それ以外でも合わせて50回くらいウィーン国立歌劇場の公演を鑑賞しているが、この来日公演の水準は同劇場における「普通」だ。
だが、その「普通」が日本にやって来ると「なんという高水準!」になる。つまり、レベルの違いをまざまざと見せつけられたというわけですな。
 
ソロ歌手たちはツワモノばかり。その中で一際群を抜いて素晴らしかったのが、急遽代役として登場したS・グールドだったというのが面白い。
もう一人の代役ハウツィールは、知らない歌手だったのでちょっと心配だったが、不安は完全に払拭。「作曲家」は演技も求められるが、その演技がとても見事で、歌唱と合わせて大満足。
 
指揮のヤノフスキは、本当に手堅くて、隙がなく、万全。オーケストラにしても歌手にしても、これほど頼りになる指揮者がいたら、きっと安心して演奏に集中できるだろう。
 
演出は、保守的なオペラファンにとってとても受け入れやすいものだと思う。色々と細かい演技が数多く施されているが、それらが決して音楽の邪魔をしていないというのがポイントだ。
ツェルビネッタ一座が歌う音楽は彼らの即興ではなく「作曲家」が作った音楽で、連中が歌う直前に作曲家が彼らに指示を与えているところ。それからツェルビネッタの長大なアリアは、実はその中の一部がアリアドネに与えられていて、アリアドネがそれを引き継いで歌おうとしたら、彼女に渡さずツェルビネッタがそのまま歌ってしまい、アリアドネがイライラするところ。そうした場面は4年前の初演観賞時に気づかなかったもので、とても興味深かった。