クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2010/5/20 都響

2010年5月20日  東京都交響楽団 定期演奏会  サントリーホール
指揮  大野和士
中村功(パーカッション)
シューマン  マンフレッド序曲
細川俊夫  打楽器とオーケストラのための協奏曲「旅人」
チャイコフスキー  交響曲マンフレッド
 

 絶妙、実に面白い選曲だ。さすが大野さん。
 一曲目とメインのタイトルが同じ「マンフレッド」ということで、この二曲が関連があることは誰でもパッと見で分かる。
 「マンフレッド」とはイギリスの詩人バイロンの作品に出てくる人物で、アルプスなどをさまよう放浪者である。実は私もマンフレッドについてはこの程度しか知らないのだが、この程度の知識さえあれば、実は三曲全てが共通関連していることに気付くことができる。そう、「旅」「流浪」「彷徨い」である。
 
 更に、だ。
 あくまでこれは私の勝手な推測なのだが・・・大野氏が日本に来る直前までどこで何をしていたかご存じであろうか?  ニューヨークでメトロポリタンオペラを振っていたのである。振っていた演目、それは
 「さまよえるオランダ人」  なのだ。
 このプログラムの一連の流れ、関連・・・これは果たして偶然か??いや、違うと思う。入念に考えられてのことに違いない。たぶん。

 今や世界を忙しく飛び回って獅子奮迅の活躍を見せるマエストロ大野。売れっ子演奏家にとって、日常とは「旅」に他ならない。今回の日本での公演も、里帰りでも何でもなく、世界中から引きも切らない契約の一つとしてやって来た。ニューヨークから東京へ。彼自身もまた「マンフレッド」ということかもしれない・・・すまん、かなり穿った見方かもしれないが、でも、もし本人にこのことを質したら、きっとニヤッと笑ってくれると思う。
 
 
 演奏はどれも核心を突き、自信に満ち溢れた堂々たるもの。大野さんの強みは、「この曲につきましては、全て掌握していますよ」ということを、棒一本タクト一振りで示すことが出来ることだと思う。オーケストラにとって、これほど安心し全幅の信頼を寄せることができる指揮者はそういないのではないだろうか?
 そういえば、この日はヴァイオリンの最前列に、都響が誇るソロコンマス二人が揃い踏みで並んでいた。オケとしても最高の敬意を表したということだろう。
 
 個人的に、一曲目のシューマンが一番良かった。クレッシェンドを利用して巧みなうねりを創出し、見事な効果をあげていた。