2009年12月1日 マリインスキー歌劇場管弦楽団 サントリーホール
指揮 ワレリー・ゲルギエフ
デニス・マツーエフ(ピアノ)
ショスタコーヴィチ
歌劇 鼻より 交響曲第1番 ピアノ協奏曲第1番 交響曲第10番
はたして「天才の為せる業」なのか、それとも「狂気の沙汰」なのか??
誰のこと? ショスタコーヴィチ? それともゲルギエフ?
両方だ。いや、一人加えて「3人とも」だ。ショスタコ、ゲルギー、そしてマツーエフ。
この日の公演は何かに取り憑かれていた。降りてきたのは神なのか、それても悪魔なのか?
私は聴きながら、畏怖感に襲われた。まるで、大きな地震が来る直前にやってくるP波(初期微動)の縦揺れをずっと感じ続けているようだった。
間違いなく「悪魔の方」が乗り移っていたのは、マツーエフだ。あれはマツーエフが弾いたんじゃない、悪魔が弾いたんだ。絶対。
特に最終楽章の尋常ではないテンポに対するピアニズムといったら・・・。言葉が出ない。
悪魔に取り憑かれたピアニストを聴いたのはこれで二人目だ。もう一人とは、そう、ポゴレリッチね。
そしてゲルギエフ。
かつて世界を席巻していた往時に比べ、最近はその勢いがなくなっていたかに思えたが、この日の公演は久々に「出た」って感じだ。現在、ショスタコーヴィチにおいて、この日を越える演奏を聴くことはまず出来ないだろう。チャイコは誰かに任せて、もうプロコフィエフとショスタコーヴィチのスペシャリストとしてやっていくことをお勧めします。それだけで生きていけると思うがなあ。膨大なレパートリーを持つご本人にとっては、余計なお世話以外の何物でもないだろうが。
「オールロシアンプログラム!」と銘打った今回の来日公演。だが、ふたを開けてみたら、ロシアンフェスティバルではなく、やっぱりゲルギエフフェスティバルということだった。