クラシック、オペラの粋を極める!

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思い出の「ブル8」

1984年3月7日  NHK交響楽団定期演奏会  NHKホール
指揮  ロヴロ・フォン・マタチッチ
ブルックナー  交響曲第8番


 この時私は大学1年生。これがなんと初めてのN響定期公演鑑賞であり(地方公演はその前に一度あり)、更にブルックナー交響曲初生鑑賞でもあった。つまり、私にとって記念すべき公演であったが、これがN響にとっても歴史的な公演で、後世に語り継がれることなど当時は全く知る由もなかった。


 この公演の話の前に、私がブルックナーの門の扉をたたくまでの話を少しさせていただくと、中学生の頃からクラシックを聴き始めたが、当初ブルックナーは敬遠していて、大学に入るまで一曲も知らなかった。なんか、難しそうで上級者向けというイメージを持っていたのである。

 高校ブラスバンド部で一緒に活動した友人が、私とは異なる大学に入学してそこの管弦学部に入った。彼が私に「今度ブルックナー5番を演奏することになった。すごい曲で興奮している。」という手紙をくれたことが、私がブルックナーに関心をもったきっかけとなった。
 というわけで、初めてレコードで聴いたのが5番(4番ロマンティックでないところがミソ)。あっという間にその魅力に取り憑かれ、4番、そして7番、8番という順でむさぼるように聴いていった。

 そうなってくると、今度は生公演を聴きたい衝動に駆られてくる。ちょうどそんな時にグッドタイミングでN響のコンサートがあったのだ。

 つまり、私はブルックナーだったら何でも良かった。たまたまN響だったのだ。マタチッチのことなど全く知らなかったし、そもそも指揮者はどうでも良かった(笑)。

 この公演のことは今でもよく覚えている。

 マタチッチは当時、もう相当の年齢でいわゆる巨匠タイプ。体は思うように動かず、肩も上がらず、手の動きも小さくて、ただヒラヒラと動かしているだけのように見えた。特別なことをやっているようには全く見えなかった。
 だというのに、例えばクレッシェンドでは、あたかも細胞がみるみるうちに増殖して膨れあがるかのようであった。オケの気合いも凄く入っていて、単なるヒラヒラの指揮に対してどうしてそんなにグイグイ演奏するの??と見ていて不思議なくらいだった。

 初めて聴いたN響がまたうまかった!特に金管楽器の重厚なサウンドに圧倒された。なんとなく外国のオケに比べて日本のオケを低く見ていたが、実はそうとうも限らないということを知った。

 この公演が、実は空前絶後スペシャルだったということを知ったのはずいぶんと後のことである。
 そもそもN響を聴いたのが初めてなくらいだから、「これは歴史的な名演だ!」なんて印象を持つわけがない。だが、この時N響の演奏に圧倒されたことは紛れもない事実だ。

 ブルックナーの8番が私にとって「特別」な曲だということは、以前のブログで書いた。
 特別である理由の一つに、このN響の公演はもちろん含まれている。