クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2009/12/5 新国立 トスカ

2009年12月5日  新国立劇場
プッチーニ  トスカ
指揮  フレデリック・シャスラン
演出  アントネッロ・マダウ・ディアツ
イアノ・タマール(トスカ)、カルロ・ヴェントレ(カヴァラドッシ)、ジョン・ルンドグレン(スカルピア)  他


 昨日はわたくし、オペラ体験はそれなりにあるものの、どちらかと言えばまだ初心者である友人Kくんをお誘いして観劇しました。
 Kくんと言えば、この夏に書き上げたイタリア・モナコ旅行記の登場人物(同行者)で、つまり、わたくしと一緒にミラノ・スカラ座詣でし、椿姫を見たお方でございます。だからオペラ芸術の素晴らしさは十分知っているはずなんだけど、私に言わせれば、ま~だまだ(笑)。ここは新国立が誇るプロダクションを観て堪能してもらい、是非オペラに片足突っ込んでもらいたいものである。(私のように両足突っ込めとは言いませんが)

 というわけで、このプロダクションを何度も観ている私は、自分がどう感じるかは二の次で、Kくんがいかに楽しんでくれて、そして‘開眼’してくれるのかが最大の関心事だった。

 ある程度の自信はあった。
 美しい音楽、劇的なストーリー、スケールの大きい舞台装置。豪華絢爛、これぞオペラのスペクタクルというものでしょ?このトスカ、新国立4回目の再演(音楽教室公演を除く)となり、アイーダと並んで同劇場の看板演目と言っていいのだ。
 更には適度な長さ、オーソドックスで分かり易い演出など、まさにKくんにぴったり。

 一方で、懸念がないわけでもない。
 クラシックファンにとってオペラはあくまでも‘音楽’であり、見た目よりも音が重要なのは言うまでもないのだが、‘普通人’であるKくんは「舞台芸術である以上、見た目は重要だ。」と主張するのだ。
 Kくんの言い分。
「原作に書かれた設定の年齢よりもはるかに年増で、しかも大柄(つまりデブ)なプリマドンナが舞台でお姫様を演じることに、オペラファンは何の戸惑いもないのか?容姿の悪さに目をつぶり、想像力を駆使してそれを補い、出てくる音のみに集中するのは、やはり無理があるのではないか?」

 案の定、トスカを演じるイアノ・タマールに対して苦言。「どう見てもおばさん(笑)」
確かに、私から見てもこのお方はイマイチ華がありませんな。

 結論的に言うと、Kくん、十分に楽しまれた様子でございました。「いや~、良かった良かった」と。

 だが、最後にこう言うのも忘れなかった。
「オペラを映画にして、俳優が口パクをし、音声をオペラ歌手がかぶせて、見た目を美しくさせれば、もっと一般ファンを開拓できるんじゃないの??」

 まあねえ、確かにそういう試みもある。何度かそういう映画が作られている。
 だけどね~、やっぱりオペラの素晴らしさは見た目じゃなくて音楽なんだってばさ。そういう『作り物』はごく一部の支持しか得られないんですよ。

 かくして私とKくんとの議論はまだまだ続くのであった。

 とりあえず彼には、我が女神ベーレンス、若くてハンサムなドミンゴ、これぞ悪役!という絶品のスカルピアを演じたコーデル・マクニールと、三役揃った80年代メトのトスカの映像(指揮シノーポリ)を見せて、屁理屈を黙らせたいと思っている。