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2019/12/2 マリインスキー歌劇場 マゼッパ

2019年12月2日   マリインスキー歌劇場   サントリーホール
チャイコフスキー   マゼッパ (コンサート形式上演)
指揮  ワレリー・ゲルギエフ
ウラディスラフ・スリムスキー(マゼッパ)、スタニスラフ・トロフィモフ(コチュベイ)、アンナ・キクモーゼ(リュボフ)、マリア・バヤンキナ(マリア)、エフゲニー・アキーモフ(アンドレイ)   他


開演前、悲しいお知らせがもたらされた。マリス・ヤンソンスの訃報である。
「本公演の演奏を故人に捧げる」というゲルギエフの意向が伝えられ、場内で黙祷が行われた。

ヤンソンスラトビア人であるが、旧ソ連出身。サンクト・ペテルブルクに住まいがあり、亡くなったのも、そこだという。
ヤンソンスが、ゲルギエフやマリインスキー歌劇場と直接的にどれくらい繋がっていたのかは、よく知らない。
が、絆はあったに違いない。かつてサンクト・ペテルブルク・フィルを指揮して活躍したヤンソンスを、ゲルギエフが「偉大な先輩」として仰いでいたとしても何の不思議もない。
また、ミュンヘンが誇る2大オケ、バイエルン放響のシェフがヤンソンスミュンヘン・フィルのシェフがゲルギー、という縁もある。

そうしたゲルギエフの想いが痛いほどに伝わってくる、熱烈さと鋭気がほとばしった演奏だった。

と同時に、自らが持つレパートリー、あるいはマリインスキー歌劇場が持つレパートリーへの絶対的な自信、自負も、これでもかとばかりに見せつけた。
日本だけでなく、世界的に見てもメジャーとは言い難い作品、マゼッパ。
そのような作品を完璧に掌握し、まるでポピュラーなチャイ5や悲愴を演奏するかのような自在な表現力。「これは自分たちの物なのだ」と言わんばかりのプライドが滲む意気軒昂な演奏。

そうなんだろうな・・・。
普通はマゼッパを鑑賞する機会なんか、絶望的に無い。
でも、サンクト・ペテルブルクに行けば、その機会がある、チャンスがある。
つまり、そういうことなんだよな。
それこそが偉大なチャイコフスキーを生んだ国ロシアの底力であり、マリインスキーの底力なんだろうな。

考えてみれば、日本でまったく上演されないプロコの「炎の天使」「3つのオレンジへの恋」「戦争と平和」や、ムソルグスキーの「ホヴァンシチナ」などのレア作品を、来日演目として果敢に採り上げてくれたのが、ゲルギー率いるマリインスキー歌劇場だった。我々は、彼らに感謝しなければならないのだ。

話を今回の演奏に戻すが、マリインスキー歌劇場管の強烈な演奏パワー、すごかった。
それから、合唱団の息を飲むような迫力の歌声、圧倒的だった。
多くの聴衆が、マゼッパという作品を堪能し、演奏を楽しんだことだろう。

もしそのことをゲルギエフに言い伝えることが出来たら・・。
彼はほくそ笑み、そしてこう答えるだろう。
「演奏を捧げたヤンソンスも、さぞかし喜んだことでしょう。」と。