クラシック、オペラの粋を極める!

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2024/7/23 パルジファル

2024年7月23日   バイエルン州立歌劇場(ミュンヘン・オペラ・フェスティバル2)
ワーグナー  パルジファル
指揮  アダム・フィッシャー
演出  ピエール・オーディ
ジェラルド・フィンリー(アンフォルタス)、バリント・ザボ(ティトゥレル)、タレク・ナズミ(グルネマンツ)、クレイ・ヒリー(パルジファル)、ヨッヘン・シュメッケンベッヒャー(クリングゾル)、ニーナ・シュテンメ(クンドリー)    他

 

ワーグナーを上演する劇場として、バイロイトやウィーンと並び、世界のトップ級にランクされるバイエルン州立歌劇場。ワーグナーがレパートリーの重要な柱の一つになっているこの劇場で、その作品を鑑賞するのは、とてもスペシャルなこと。
私はバイエルンが上演するワーグナーの主要オペラをほとんど観ているが、唯一パルジファルだけがこれまで無かった。今回、ようやく初めて観ることが出来た。これによって、バイエルン州立歌劇場が上演するワーグナー主要作品をいちおう制覇した。自ら誇りたいと思う。
(※恋愛禁制やリエンツィなどの初期作品を除く)


演奏は、本当に素晴らしかった。この充実した演奏の成果は、やはり指揮者A・フィッシャーのお手柄ということでいいだろう。

私なんかは、こんなにも長大なワーグナーのスコアを頭の中に叩き入れ、音楽を進行させる、それだけでも十分に「凄い!」と思ってしまうのに、更に、溜めを作り、陰影を付け、頂点を築く、そうした「表現」を繰り出すフィッシャーに、心底感服した。作品の勘所も押さえており、ベテランの貫禄、職人による匠の技だと思った。


歌手について。
この公演の前に、アンフォルタス役のジェラルド・フィンリーが、バイエルン州立歌劇場の宮廷歌手「カンマー・ゼンガー」の名誉称号が贈られたというニュースが飛び込んできた。7月20日の前回の「パルジファル」終演後、授与式が行われたのだという。
フィンリーは、演技、表情が実に上手くて、味がある。歌にも真実が備わっていると感じた。

あとは、やっぱりシュテンメ先生。スケールが非常に大きく、そして深い。
私はシュテンメを真に偉大な歌手だと認め、尊敬している。彼女もまた、バイエルンのカンマー・ゼンガリンである。
今年は、3月のバーデン・バーデンの「エレクトラ」に続き、2回も彼女の歌唱に接することが出来たのは、この上ない喜びだ。

タイトルロールのC・ヒリー。
荒削りの部分はあるが、いよいよ本格的なヘルデン・テノールとして名乗りを挙げてきたな、という感じ。劇場内にパワフルな歌声が鳴り響いた。ただ、声質は少し個性があるので、もしかしたら人によって好みが分かれるかもしれない。


演出のオーディは、昨年10月、新国立劇場が新制作した「シモン・ボッカネグラ」を演出した人物。その「シモン」もそうだったが、抽象的なイメージ画像をモチーフにし、インスピレーションを駆使してこれを膨らませ、象徴化させながら舞台を作っていく。これが彼のやり方。

今回のモチーフとなった抽象画像は、幕に投影されていた、朽ち果てたミイラのような人間の体。
聖杯の儀式に参加する衆、あるいはパルジファルを誘惑する花の乙女たちも、身体の筋肉や脂肪がただれ落ちた、醜い裸体の衣装を着て出てくる。
おそらく、老い、衰え、末期、死といった人間の宿命を表現したいのだろう。アンフォルタスは、パルジファルの救済によって蘇るのではなく、そのまま死を迎える。

だが・・・ただそれだけなのだ。
物語の進行や場面転換でのドラマの起伏は、動きがほとんどなく、平坦。私にはひどく凡庸、退屈な演出に感じた。刺激の強い現代演出ばかり観てきて、感覚が麻痺してしまったのだろうか・・・。

新国立の「シモン」では、舞台上に逆さまにした火山をオブジェとして使っていたが、今回、第1幕の舞台になっていた森を、第3幕では天地逆転の逆さまにしていて(木々を根っこから上から吊るす)、「発想がワンパターンだなあ・・」と思ってしまった。