クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2024/5/20 ナクソス島のアリアドネ

2024年5月20日   コブレンツ劇場
R・シュトラウス   ナクソス島のアリアドネ
指揮  フェリックス・ペッツォルト
演出  エルマー・ゴエルデン
ニコ・ウォーテルス(音楽教師)、ハルナ・ヤマザキ(作曲家)、ハイコ・ベルナー(バッカス)、ディルク・エイヒャー(舞踏教師)、イ・ハナ(ツェルビネッタ)、アドレアーナ・クラシェウスキ(アリアドネ)、クリストフ・プレッサース(ハレルキン)   他

 

最初に、作曲家役のハルナ・ヤマザキさん。その名のとおり、日本人。
ただし、劇場オフィシャルサイトのバイオグラフィーを見ると、「シュトゥットガルト生まれ、シュトゥットガルト音楽大学東京藝術大学で研鑽を積み、2012年からコブレンツ劇場に所属」とある。
たとえ両親が日本人で、日本で生活していた時期があったとしても、生まれはドイツであり、10年以上コブレンツ劇場に在籍して拠点をこっちに置いているということは、もしかしたら国籍はドイツかもしれない。(日本は二重国籍を認めないため)
きちんと確認出来ていないので、とりあえずここでは表記をハルナ・ヤマザキとしておこう。

そのヤマザキ、演出の都合上、「作曲家」というより、そこら辺にいるような野暮ったい学生風の衣装とかつら、眼鏡を付けさせられ、見た目が何ともパッとしない。欧米の出演者と並ぶと、いかにもアジアンな子供っぽさが浮き出てしまう。
まあ、あくまでも音楽とは関係ない見た目の問題なんだけど、損してるなあという感じ。

歌唱は、まあ何というか、それなりというか。よく健闘していたことは認める。

一方で、ツェルビネッタを歌ったイ・ハナが、抜群に上手い。
その名のとおり、韓国出身。彼女もまたここの劇場の専属だが、例えば「ランメルモールのルチア」などの主役もこなしていて、おそらくエース級。
そんなわけで、ツェルビネッタと作曲家が絡み合う場面などで、差が歴然。かくして日韓対決は、韓国の圧勝。オペラにおいては、とにかく韓国勢強し。
(本公演には、他にもトルファルデン役でイム・ジョンミンという歌手が出ていた。)


総合的な音楽面については、そりゃもちろんローカル劇場としての実力相応というのはある。
だが、コブレンツという、人口たったの10万人の市立劇場ということを考えると、なぜこのような本格レベルの上演が可能なのか、ちょっとアンビリーバブルとしか言いようがない。
ドイツでは、こうした10万人規模の何十という都市が劇場を持っていて、オペラや演劇、コンサートを通年開催しているのだ。しかも、素人の演芸発表会ではなく、立派なプロ公演なのだ。こんなの日本じゃ考えられない。恐るべしドイツ。


一方で演出は、やはり厳しい予算の制限下で製作されているのが一目瞭然。
舞台装置はほぼ無いと言ってよく、普通のオフィスに置いてあるような机やイス、雑多品などを小道具に使用。これはお金がかかってない(笑)。

まあでも良い。上記のとおり、オペラをレパートリーとして本格上演している、ただそれだけですごいのだ。
何よりも、私はシュトラウスの音楽を楽しめた。感動もした。これ以上、何を望むことができようか。


ラストの場面、バッカスアリアドネの壮大な二重唱のクライマックス。
舞台前方に作曲家とツェルビネッタの二人が登場。作曲家が自作のスコアのページを開いてツェルビネッタに見せ、音楽の進行を譜面上から指で追いながらツェルビネッタに聴かせる。ツェルビネッタは「素敵な音楽ね!」と感心し、作曲家を見つめて微笑む。

ああ、なんて美しいシーン、清々しい演出!