クラシック、オペラの粋を極める!

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2016/11/26 二期会 ナクソス島のアリアドネ

2016年11月26日  二期会   日生劇場
演出  カロリーネ・グルーバー
小森輝彦(音楽教師)、白土理香(作曲家)、林正子(アリアドネ)、片寄純也(バッカス)、髙橋維(ツェルビネッタ)   他
 
 
演出と音楽(指揮)の主導権争いがマジ面白かった。
 
いや、実際はそんなことは起きていなかったかもしれない。オペラの制作過程は共同作業。緊密に連携しなければ、良い物が出来上がらない。ヤング氏とグルーバー氏はドイツで一緒にやったことがあると聞いているし、張り合う必要なんかきっとないはずである。
 
だけど、私はそれが起こっていると感じたんだ。そのように伝わってきたんだ。
演出は演出で、上演を積極的にリードしようとする。「このオペラから汲み取った物はこれ!オペラを通じて私が表現したい物はこれ!」と、どんどん仕掛けてくる。
一方の指揮者も、タクトから自信満々のオーラが全開。「シュトラウスは私に任せて。得意中の得意だから!」という自負、確信が滲み出ていた。
 
かくして、主導権争いが必然的に勃発。
 
私はというと、とことん指揮者ヤングについて行く。
別に、グルーバーの演出が悪いとは思わない。が、時々「この演出家、音楽の力を完全には信用していないな。」と見受ける節がある。そうした時、目障り感が出る。
このため、わざと視野を狭くし、歌っている歌手とピットの中を一生懸命覗き込んで音楽に集中した。
 
ヤングの指揮は、女性だからという目で見ているつもりはないが、実にしなやかだ。8の字を描くような曲線のタクトが美しい。淡々と進める箇所と、じっくり聴かせる箇所のコントラストも実に見事。上に書いたように、作品の解釈に自信が揺るぎないため、オーケストラが安心して指揮者に付いて行っている印象を受ける。
 
歌手ではアリアドネを歌った林さんが秀逸。プリマドンナギリシャ悲劇の王女の両面を、演技も歌唱もきっちり描き分けていた。
ツェルビネッタの髙橋さんも良かった。
林さんが「周到にスコアを読み込んだパーフェクトな成果」だったとすれば、髙橋さんは「周到な準備を感じさせないほど身に付いた自然な軽やかさ」(もちろん、実際は相当練習したはず)がとってもナイス。「こんな女の子、いるいる」と思わせる演技力。演出家も彼女の演技にはさぞかし満足したのではないだろうか。例の超絶アリアも、まったく不安を感じさせなかった。
 
全体を通して、二期会の歌手陣にとって今回のプロダクションは素晴らしい経験だったのではないかと思う。作品を掘り下げながら、演技も歌唱も全力で体現する指導を徹底的に受けたはずだ。
 
これだけ頑張ったのに、本番がキャスト組それぞれでたった2回というのは、あまりにも少なくてもったいない。出演者たちはおそらく「もっとやりたい」と思ったのではないか。
だからといって、主催団体として本番回数を増やせるほどのプロデュース力はまだまだ足りない。
 
痛し痒し、なんだろうね。