クラシック、オペラの粋を極める!

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2009/4/16 M・デヴィーア ソプラノリサイタル

2009年4月16日 マリエッラ・デヴィーア ソプラノリサイタル 東京オペラシティホール
マリエッラ・デヴィーア(ソプラノ)
ロゼッタ・クッキ(ピアノ)
ロッシーニ、グノー、マスネ、ドニゼッティベッリーニヴェルディの歌曲、オペラアリア


仮に、だ。
「世界最高のベルカントの女王」の称号を、グル様ことE・グルベローヴァに捧げることになったといたしましょう。
 その時、これに「ちょっと待ったああ!」と敢然と異を唱えることが出来る人が、もしもいるとしたら・・・それはたった一人、この人しかいない。そう、マリエッラ・デヴィーア様だ。

 グル様がウィーンやミュンヘンなどの国際舞台で活躍する大スターであるのに対して、デヴィーア様はベルカントオペラの本場、母国イタリアで他の追従を許さないプリマ・ドンナだ。

 この二人、お互いのことをどう思っているのだろう??想像するだけで怖い。

 デヴィーア様はグル様のことを「イタリア人ではない人に真のベルカントが分かるのかしら??」なんて思っていたりして。ああ怖い・・。

 実際、二人の間で壮絶な火花が散ったことがあった。なんと、東京で。
 1996年9月、フィレンツェ歌劇場の来日公演。演目はドニゼッティの「ランメルモールのルチア」。よせばいいのに、ダブルキャストで二人を呼んだのだ。一人で十分だっつうのに。

 火花が散ったのは、初日(プレミエ)を二人のうちどちらが歌うのかということで、だ。

 私は関係者ではないので、詳しくは知らない。だが、初日を歌うことになったデヴィーアに対してグル様がかみついたようだ。「どうして私じゃないの?!」って。ああ怖い・・。
 主催者は「初日にどっちが歌うかは大した問題ではない。(確かに、日本人はあまり気にしないね。平日のプレミエより土日の公演を優先するしね。)あなたを崇めるファン達はあなたの歌う日の公演チケットをちゃんと買いますよ!」と必死になだめたのだとか。そんな苦しい言い訳でグル様は納得したのかなあ・・ああ怖い・・。

 前置きが長くなってしまった。デヴィーアの公演について。

 プログラムは歌曲とオペラアリアが程良く混じり合っている。また、イタリア語だけでなくフランス語の歌も程良く混ざっている。
 譜面台を用意し、歌う楽譜を手元に置いている。音楽も歌詞も当然完全に頭の中に入っているだろうに。すべては楽曲こそが第一というまじめで真摯な姿勢だ。歌いっぷりも心がこもっている。イタリア人にありがちなフレンドリーで笑顔いっぱいのリラックスムードはない。

 天国に届くかのごとく艶やかに伸びる高音の美しさは以前から全く変わらない。その一方で、以前に比べて声は少し重くなったような気がする。いや、重いというよりは、芯が強くなったと言うべきか。きっとオペラでも、ただ恋に悩む可憐な乙女を演じるのではなく、心に秘めた情熱のためには命さえ捧げるという強さを兼ね備えた女性を演じるようになっているのだろう。

 アンコールは椿姫第3幕のアリア、ノルマの「清らかな女神よ」、トゥーランドットのリューのアリアの3曲。規定のプログラム以上に聴衆が熱狂したのは言うまでもない。