クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

グルベローヴァ

 クラシック音楽雑誌「モーストリー・クラシック」の今月号の特集は「世界の名歌手格付け」だった。男女ごと、また現役と歴代総合ごとにそれぞれ分けて、偉大な歌手をランキングしてしまおうという企画記事である。評論家やジャーナリストが投票したもので、なかなか興味深く、思わず見入ってしまった。
 
 順位を付けることは試みとして面白いが、既に鬼籍に入っている人たちが伝説化、神格化、絶対化されてしまい、常に現役組の分が悪くなるのが問題だ。今回の特集では、きちんと現役組を独立させ、分けているのは良いと思う。
 また、調査の「タイミング」が大きく反映してしまうのも悩ましい問題。例えば、ホセ・カレーラス。三大テノールとして一世を風靡し、偉大なテノール歌手としてその名を轟かせているにもかかわらず、現在はオペラも引退して細々とリサイタルを行なっている程度なので、このタイミングのランク付けでは現役としては下位に沈み、なおかつ歴代総合でも神格化された人たちに押し出されてしまっている。もうちょっと公平な評価が出来ないものかと首をひねってしまうが、まあ仕方がないのだろう。(ドミンゴが男性の歴代総合部門で堂々第2位にランク・インされたのは実に素晴らしい。)
 
 
 さて、本題だ。
 詳細のランク結果は雑誌を購入して御覧になっていただくとして、以下の結果順位について、皆さんはどうお思いであろうか。私は思わず雑誌を取った手がわなわなと震えてしまった。
 
女声現役ランキング
 
なぜだ!? 納得がいかない。なぜ偉大なグル様がバルトリとデヴィーアの後塵を拝しているのだ!?
 
 もちろんバルトリもデヴィーアも、素晴らしい歌手であることは認める。
 だが、グルベローヴァは特別だ。唯一無二の歌手だ。彼女は1980年代から今に至るまでのオペラを語る上で欠かすことの出来ない絶対的な存在だ。現役の中で、彼女以上に栄光に包まれ、輝かしいキャリアを築いた女性歌手などいないはずである。
 ツェルビネッタという一役だけでも未来永劫まで語り継がれるほどなのに、そこに安住せず、ベルカントの分野で新境地を開拓し、ついに誰もが認める「女王」の称号を戴冠した。アンナ・ボレーナにしてもロベルト・デヴェリューにしても、最近はあまり歌わなくなったルチアにしても、グルベローヴァが歌うから話題になり、その公演のチケットが売れる。彼女が歌うから上演に箔が付き、作品が甦るのだ。バルトリやデヴィーアに、グル様ほどのインパクトや影響力があると言えるだろうか?
 
 ステージの登場回数も多く、また親日家で何度も来日しているので、みんな、身近で手が届きそうだと勘違いし、グル様がそこにいることが当然だと思い込んでいないか?ありがたみが薄れていないか?不世出の歌手がこれだけ何度も日本を訪れてくれていること自体が奇跡で、いくら感謝してもし尽くせないのだ。
 
 今まさに日本に来ている彼女が、もし愛する日本で発表されたこの結果を知ったら、絶句し、嘆き悲しんでしまうのではないか!?
 
 まったく評論家のバカタレどもめ!!
 
 
 ついに、ついに、これが日本での最後の公演になってしまった。我ら普通のクラシックファン、オペラファンは、彼女の功績と貢献に最大限の感謝を捧げて、盛大に喝采を送り届けようではないか!
 
 今、このブログを書いているちょうどこの時間、東京文化会館で上演中のアンナ・ボレーナ二日目の公演がまさにクライマックスを迎えているところではないかと思う。どうか大成功を収めてくれますように。
 
 そして最終公演の11月4日(日)は、私も襟を正し、正座するくらいの姿勢で有終の美を見届け、彼女の音楽人生を祝福しようと思う。