DVDでショスタコーヴィチのオペラ‘ムツェンスク郡のマクベス夫人」を鑑賞した。
大好きな作品なので、音楽については熟知しているが、新国立劇場の上演が迫ってきたことと、1月にパリで観てきた同プロダクション(同じ演出)を振り返りたかったことで、オフの今日、自宅で見ました。
キャストはほとんど同じ。セルゲイ役が違うが、さほど気にならない。
DVDの方に完全に軍配が上がるのが、ピットの中だろう。オリジナルであるDVDのネザーランドオペラでは何と言ってもM・ヤンソンス率いるコンセルトヘボウ管が最高だ。
パリで聴いたハルトムート・ヘンヒェン指揮のパリオペラ座管弦楽団も素晴らしかったが、ヤンソンスの方が音楽がよりはじけ、強烈な炸裂パンチを見舞われる。特に場面をつなぐ間奏曲の演奏は凄まじいほどだ。
演出家のクシェイ氏によると、この間奏の箇所についてはヤンソンスと話し合った結果、クシェイの進言によって幕を閉じ演出無しの音楽のみとすることにしたそうだ。音楽が雄弁に語っているにも関わらず無意味な演技を繰り広げて失笑を買う演出家が多い中、スキャンダル演出家クシェイとは思えない優等生的意見だ(笑)。
その演出面において感心した点を一つ。
第3幕で殺人がばれて警察に御用となる際、セルゲイが機転を利かせて警察署長にわいろを握らせようとする。警察署長はその前にさんざん「いいことねえかなー。ウマい話ねえかなー。」と歌っていたわけだから、おそらくわいろをありがたく頂戴したであろう。セルゲイとカテリーナにとってもそれで助かるのなら悪くない。
ところがこの取引をカテリーナが壊してしまった。結局二人は逮捕される・・・。
このように演出されると、次の第4幕でなぜセルゲイがカテリーナを捨てて別の女性に行ってしまうのかがはっきり明快になる。クシェイの素晴らしい解釈である。
以上については、パリで観た際には気が付かなかった。DVDを観て初めて気が付いた。こうやって見直すことによって新たに発見する物も多々あるのだ。
パリでの生公演でも、DVDの映像でも、変わらぬ素晴らしさを見せているのは主役カテリーナを演じたエヴァ・マリア・ウェストブルックだ。本当に凄い!歌も素晴らしいが、妖艶な演技が凄い!男なら目が釘付けになるほどの色気だ。
いずれにしても、このDVD、新国立劇場の予習として、是非是非観ることを強くお薦めする。
新国立劇場のロイヤルオペラハウスプロダクションも本当に楽しみ!リチャード・ジョーンズの演出も期待できるぞ!