クラシック、オペラの粋を極める!

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2019/4/5 東京・春・音楽祭(ワーグナーシリーズ)

2019年4月5日   東京・春・音楽祭(ワーグナーシリーズ)   東京文化会館
ワーグナー   さまよえるオランダ人(コンサート形式上演)
指揮  ダーヴィト・アフカム
管弦楽  NHK交響楽団
合唱  東京オペラシンガーズ
ブリン・ターフェル(オランダ人)、イェンス・エリック・オースボー(ダーラント)、リカルダ・メルベート(ゼンタ)、ペーター・ザイフェルト(エリック)、アウラ・ツワロフスカ(マリー)    他
 
 
コンサート形式上演方式のメリットが最大限に発揮された歌の饗宴。
私は、舞台上演(演出付き)とコンサート形式上演なら、文句なく舞台上演の方を望む人間だが、これほど演出の必要性を感じさせない公演も珍しい。
演出の不存在を補うために、背景のスクリーンにイメージ映像を写して進行させているが、それでも舞台という形はほとんど見えない。そして、そのことに何の物足りなさも感じない。
舞台の形は見えなくとも、出演歌手が歌で登場人物の心情を切々と語るため、物語そのものは鮮明に描写される。
つまり、イメージ映像なんかいらなかった。それだけ出演歌手が素晴らしかったということ。それに尽きる。
 
B・ターフェル、R・メルベート、P・ザイフェルト、彼らの歌唱芸術について、何か美しく形容できるような称賛の言葉を探そうとしたが、やっぱり「素晴らしい」しか思い当たらない。
彼らの歌唱は、ウィーンやミュンヘン、ニューヨーク、あるいはバイロイトあたりの場が相応しい、極上のレベル。それを東京にいながらにして鑑賞できたのは幸せだ。
 
D・アフカムの指揮についてだが、最初は、豪華な歌手が集ったガラ・コンサートの、いかにも伴奏のような下支えの感じがした。
ところが、じっくり聴いてみれば、オーケストラを自在に操っていることがすぐに判明。劇的な迫力にも申し分がなく、聴き手を安心して音楽に集中させ、陶酔を味わせてくれたのは、やっぱり指揮者の功績だろう。
 
ゲスト・コンサートマスターとしてN響を牽引したR・キュッヒルも、さすがの貫禄だ。
彼の弾きぶりは、オーケストラの規範そのもの。まるでスピーカーのように、全体の音が彼から出現しているかのよう。
なんだかんだ言っても、長年に渡ってウィーンでワーグナーを演奏してきた経験とプライドはだてじゃない。