クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

パリへの道

 先月、パリで発生した同時多発テロ事件は本当にショックだった。テロ、戦争、紛争、こうした事件の犠牲になるのは、いつもどこでも何の罪もない一般市民である。首謀者たちは相手を恐怖に陥れ、ダメージをより増幅させるため、あえてそうした人々をターゲットにする。こうした犯罪行為そのものには激しい憤りを覚えるが、私としてはそうした感情が恨みや憎しみ、あるいは特定の民族や宗教に対する偏見と差別に変わらないように抑え、とにかくひたすら世界の平和を祈りたいと思う。
 
 今回、いつも以上に現地の状況を案じたのは、私自身が近々パリを訪れる予定があるからだ。もちろんパリ・オペラ座等オペラやコンサートを鑑賞するためである。
 
 危惧したのは、情勢が落ち着くまでのしばらくの間、公演そのものが中止になってしまうのではないかということだった。また、仮に上演するにしても、主要な外国人キャストがキャンセルしてしまうのではないかという心配もあった。
 日本では、2011年3月11日以降の数ヶ月間、こうした悲しい事態に追い込まれた。同様の事が起こっても不思議はないだろう。
 
 事件が発生した日の翌日14日、パリ・オペラ座で予定されていた「愛の妙薬」は、案の定というか上演中止となった。
 ところが、それ以降は再開され、他のプレミエやバレエも含め、今も上演が続いている。不安視していた主要キャストのキャンセルも起きていない。出演者及び劇場側が一致団結してテロに屈しない姿勢を示しているのだろう。心から敬意を表したいと思う。
 
 私がパリを訪れるのは今週末だ。2日間の滞在で「パリ管」「パリ・オペラ座ファウストの劫罰』」「E・ガランチャ・リサイタル」の3公演を鑑賞する予定。
 
 この中では「ファウストの劫罰」のチケットを取るのがめちゃくちゃ大変だった。取れたのはラッキー以外の何物でもなかった。それもこれも、またまたアイツが出演するからだ。
 アイツ-そう、キャストに名を連ねるだけでチケットの争奪戦が繰り広げられ、たちまちソールドアウトとなるスーパーテノール、というかお騒がせ男、「ヨナス・カウフマン」。
 
 そりゃ私だって、カウフマンのようなスター歌手が出演するオペラは観たいとは思う。だが、別に「カウフマンだから観たい」わけではない。今回だって観賞を決めたのは、演目、指揮者、演出家、カウフマンを含めた歌手陣などの総合的判断だ。ガランチャ・リサイタルやパリ管公演のセットで全体的に魅力的だったということもある。
 
さて、熾烈を極めたチケットの獲得。一般発売された日の状況はこうだ。
受付開始時間を待ち構え、時間と同時にネットでアクセス。すると、画面に現れた驚愕の表示。私は思わず絶句した。
一般発売の枚数。カテゴリー1=ゼロ、カテゴリー2=ゼロ、カテゴリー3=ゼロ・・・以下ずっとゼロ。
ほぼ立ち見席のような最低カテゴリー8のみがわずかに売られているという状態。
つまり、発売枚数ほぼゼロだったのだ。バスティーユ劇場は欧州の歌劇場の中でもキャパシティが最大級だというのに。自分が行きたい公演日だけでなく、カウフマンが出演する日はすべてそうだという異常事態。
 クリックしようとした指が思わず硬直したが、とにかく急いで最低席を確保。15ユーロ。これもあっという間に売り切れ、こうして全カテゴリーがソールドアウトとなった。
 
 私はこれで終わりにしない。そこから連日連夜、公式チケット販売サイト画面を覗き込み、チェックすること2週間。ついに奇跡的にカテゴリー3が販売されているのを発見。慌ててゲットした。私が申し込んだら、その後再びソールドアウト状態に戻ったので、たった1枚だけキャンセルが出てきたのだろう。これぞラッキーと言わずして何と言おうか。
 
さて、話をパリ行きのことに戻す。
まだまだ情勢は不安定なのではないか、再びテロが起こるのではないかという不安がないわけではない。
だが、とにかく私は行く。そして、犠牲者を追悼する場所となっているレピュブリック広場に行く。必ず行く。そして静かに頭を垂れ、祈りを捧げるつもりだ。人類の平和を心から願って。