指揮 トゥガン・ソヒエフ
ずっと「生で聴きたいなあ。どこかでやってくれないかなあ。」と思っていた。機会を与えてくれたN響には大感謝。しかも、素晴らしい演奏だ。
本公演、N響が毎年実施している「今年のベストテン」での第一候補になるんじゃないだろうか。
こうしたベストテンでは、たいてい「意義のあった公演」「上演そのものが画期的な公演」が選ばれる。演奏そのものより、やったこと自体が評価されるというわけだが、私はこういう傾向を好ましいと思わない。純粋に演奏水準の高かったものが選ばれてほしいと思う。
今回の公演、なかなか演奏されない作品ということでは確かに「意義のあった公演」かもしれないが、何よりも演奏そのものが素晴らしかった。作品のポテンシャルと併せて、非常に高い満足感を得たコンサートだった。是非「今年のベストワン」を獲得して欲しい。
充実の結果は、やはり指揮者がもたらしたと言えよう。ソヒエフ、さすがだ。
合唱があり、オケのみの演奏があり、ソロがあり、語りの伴奏があり、と、あらゆる部分に目を行き届かさなければならないが、ソヒエフはすべてのパートに目が行き届き、進行がスムーズ。視界が非常に良好。バランス、テンポ、情景、色彩の変化、どれも洗練の極地だ。
主席指揮者を務める手兵のトゥールーズ・キャピトル管のほか、ベルリン・フィルやウィーン・フィルなどにも客演を果たすなど、着実にステップアップしている俊英。N響のお眼鏡にもかなったようで、このところ毎年招聘されている。有能指揮者を迎え、こうしたプログラムを鑑賞できるのは誠に慶賀の至りである。
語りは、歌舞伎役者というより、スター俳優の片岡愛之助。なんだかいかにも日本の時代劇っぽいセリフ口調で、「全然ロシア的じゃねえ」と少々おかしかったが、まあいいでしょう。公演に華は添えられた感じだ。