クラシック、オペラの粋を極める!

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2017/11/5 神々の黄昏

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2017年11月5日   ザクセン州立歌劇場(ゼンパーオーパー)
ワーグナー  楽劇ニーベルングの指環より第三夜「神々の黄昏」
演出  ヴィリー・デッカー
ニーナ・シュテンメ(ブリュンヒルデ)、アンドレアス・シャーガー(ジークフリート)、ファルク・シュトルックマン(ハーゲン)、イアイン・パターソン(グンター)、エディット・ハッラー(グートルーネ)、クリスタ・マイヤー(ワルトラウテ)、アルベルト・ドーメン(アルベリッヒ)   他
 
 
現在望み得る最強のキャストが揃った豪華な公演が、ここドレスデンにて実現した。
この布陣、かなり凄い。バイロイトでもなかなかこうはいかない。
新シーズンプログラムでこの公演を見つけた瞬間、ドレスデン行きを決めてしまった。即断即決、躊躇なし。
 
海外情報に目ざといワグネリアンは、さすがに見逃さない。私のように三連休に引っ掛けてはるばるやってきた同胞が多数。さながら日本ワーグナー協会ドレスデン例会ってな様相。
私も、なんと偶然昔の知り合いにも出くわした。挨拶は「やっぱ、来ますよね! ですよねー!」だった。
 
実際の演奏は、期待を遥かに凌駕した。
何がすごかったって、ティーレマン率いるSKDの、まるでアルプスのような巨大な塊の演奏、そして大海の群青色のような濃厚な演奏が、究極の絶品だった。「こんな演奏、ありか!!?」っていうくらいすごかった。これは神懸かりの演奏だ。
いやぁーー、まいった。まいったとしか言いようがない。これをやられたら、ひとたまりもない。
 
これは自分におけるワーグナー鑑賞の絶頂であり、極みだろう。
これまでもかなりの上質のワーグナーを聴いてきたつもりだ。
それでも、「これ以上はないな」と断言できる。こんな演奏されちゃったら、もう他のどんな演奏も聴けないじゃんかよ、と思う。
(えーと、聴きますけど・・・)
 
ティーレマンの黄昏はバイロイトでも聴いていて、あの時もすごかったが、その演奏も凌ぐ。これがティーレマンドレスデンの黄金コンビ、最強タッグの底力なのか・・。恐ろしい。
 
特に、ブリュンヒルデジークフリートが愛の交換をし、ジークフリートが旅立っていく「ジークフリートのラインへの旅」の場面は、心臓バクバク、血流逆走、脳内沸騰、思考破壊、失神寸前だった。
 
歌手について。
主役の二人だね、やっぱ。シャーガーとシュテンメ。千両役者。メッシとロナウド、王と長嶋、力道山大山倍達・・。
 
・・・んー、もっとましな例えはないものか。
えーと、松茸とトリュフ、フォアグラとキャビア・・。
すまん、もうやめとく。
 
コロとベーレンスに並んじゃったんじゃないかなあ。
超えたとは言わんが。
 
シャーガーは、ここ数年であっという間にヘルデンテノールの頂点に駆け上った。今が最盛期ではないか。彼のワーグナーを聴くことが出来る現代の我々は幸せだ。
 
シュテンメさん、夏のザルツ音楽祭では見事にフラれたが、こうして彼女の真骨頂を見せつけられて、もはやぐうの音も出ない。完全脱帽。ひれ伏すしかない。
 
ハーゲンのシュトルックマンは、第一幕を聴いた時、「この役は合ってないんじゃないか」と思ったが、第二幕以降はさすがの貫禄を見せた。
どの黄昏を聴いてもいつも冴えない感じのグンターだが、今回は違った。パターソン、存在感があった。
 
演出について。
堅実なデッカーらしい、正攻法の演出だ。極端な読替えは避けられ、目からウロコの仰天解釈はそれほど見当たらない。
もっとも、観たのはあくまでも四部作のうちの一つだから、シリーズを通じて何か訴えかけるものがあったのかどうかは、分からない。
(通常なら、最後の黄昏で結論を出してくるはず。それでこれだったのだから、やっぱり穏当に終始したのではないかと推測する。)
 
新国立劇場の「ピーター・グライムズ」で繰り広げた、民衆の興味本位的で一律的な集団行動を示す演技が、この作品の演出でも見られたのは興味深かった。
また、グートルーネについて、自らの行動に対する後悔と反省によって最後はブリュンヒルデの側に立ち、指環を奪おうとするハーゲンに対峙し、彼を槍で倒す、というアイデアは面白かった。
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