2017年11月12日 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 サントリーホール
レオニダス・カヴァコス(ヴァイオリン)
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
「ここまで来たか、ここまで来てしまったか・・・」
そこは、仏様の慈愛に包まれた天国だった。桃源郷であり、楽園であった。
ブロムシュテット自身が神様仏様だというふうには思えなかった。後光が指しているようにも見えなかったし、すべてを超越しているようにも見えない。タクトには、音楽を再現しようとする現実的なリードが感じられ、その芯の強さは90歳とはとても思えないほどだった。
だが、出てきた音楽は、この世の物とは思えないほど美しく、優しく、平和で、魂の解放感があった。
それが、今回の公演は、安らぎに満ちた演奏だった。
ブロムシュテットは、もう完全に悟りの境地に到達してしまったのだ。
演奏後の30秒の静寂が、そのすべてを表していた。なんて幸福で、かつ神秘的な体験だったことだろうか。