クラシック、オペラの粋を極める!

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2021/10/16 N響

2021年10月16日   NHK交響楽団   東京芸術劇場
指揮  ヘルベルト・ブロムシュテット
レオニダス・カヴァコス(ヴァイオリン)
ブラームス  ヴァイオリン協奏曲
ニールセン  交響曲第5番


94歳のブロムシュテットがやってきた。
コロナ禍という大変な中でも日本に来てくれる指揮者たち、ヤルヴィにしてもヴァイグレにしても、ノットもバッティストーニも、毎度感謝の念を込めながら会場に足を運んでいるが、今回のブロムシュテットほど「来日してくれるのか?」と気を揉み、開催決定のニュースが待ち遠しかった公演は無かった。本当によくぞいらしてくれました。

どうやら2週間の隔離は免除され、つい数日前に到着した模様。
そりゃそうでしょう。奇跡の指揮者、神様みたいな人ですよ、あーた。特別扱い、VIP待遇は当然。

緊急事態宣言が解除されたタイミングだったのも良かった。もし宣言期間中だったら、入場者数制限が課され、チケットの入手が難しくなるところだった。(実際、9月のN響の池袋C定期は、入場者数制限により、定期会員以外の一般申込みが不可となってしまい、鑑賞のチャンスを奪われてしまった。)

プログラムも、滅多に演奏されないニールセンが入り、期待が益々膨らむ。
ニールセンの交響曲は大好きで、これだけコンサートに足繁く通っている私でも、第5番はこれまでにたったの2回しか聴いたことがない。貴重な機会だ。
しかもブロムシュテットはニールセンを得意にしているらしく、過去にもサンフランシスコ響とデンマーク放送響とで交響曲全集を録音している。随分と昔、1988年10月、N響を振った第4番「不滅」の演奏は見事な演奏だったと、今もしっかりと記憶に残っている。

ということで、なんだか久々の外来オーケストラを聴きに出掛けるような高揚感、遠足に行く前夜の小学生のようなワクワク感。

そして、ステージにブロムシュテットが登場した。
割れんばかりの拍手の嵐。いやー、すごい。

皆が尊敬する老巨匠が指揮台に立った時、どのコンサートでも共通した現象が起こる。
会場の空気が一変するのである。

お客さんは、一音たりとも聴き逃すまいと、身構える。
オーケストラは、タクトから発せられる音楽的な導きを捉えようと、全力で集中する。
この時、一種異様とも言えるほどの緊迫感が会場を支配するのだ。

こうした場合、たいてい音楽は昇華していき、何とも言えない神々しさと峻厳さを湛えていくはず。
だが、ブロムシュテットは、そうなりそうでならない。あたかもそうした緊迫感からの解放を目指しているかのごとく、ひたすら自然で人間的で優しい。慈愛の精神に満ち、穏やかな笑みに包まれている。
これこそ、他のカリスマ巨匠とはやや一線を画した94歳ブロムシュテット現在の至芸なのであろう。そう思った。


前半でソロを務めたカヴァコス
2017年11月、同じくブロムシュテットが率いるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管との来日公演にソリストとして同行し、その時はメンデルスゾーンのコンチェルトを披露した。マエストロとはタングルウッド音楽祭でも共演しているとのことであり、強固な信頼関係が構築されているに違いない。

今回の演奏には目を瞠った。技術的にも音楽的にも完成されており、本格的で、マスターの風格が漂っていた。これほど堂々としたブラームスを聴いたのは久しぶりかもしれない。


コンチェルト演奏終了後、お決まりのアンコール1曲の披露はいいとして、カーテンコールの行き来が難しくなっている老巨匠をその間指揮台にずっと立たせたままにさせるのは、ちょっとそれ、いかがなものか!?(笑)。

ステマネさんでもオケの皆さんでも、誰でもいいから、椅子くらい提供して差し上げてよ。心配しちゃうじゃんかよ。

もっとも、実は予めブロム翁さんに相談していて、「ん? そんなのいらんよ。ワシは全然大丈夫なんだよ!」みたいな返答があったのかな??(笑)