クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

魔笛

知らないオペラを鑑賞する時、私の場合、①まずCDで音楽だけを聴く→②解説書や対訳などで物語の全般を把握する→③DVDなどで映像を視聴する、という順番でお勉強する。
これ、昔からのお決まりパターンだ。
(映像を最初から見ず、ストーリーも頭に入れず、音楽だけを最初に聴くというのは、『音で、まず自分なりのイメージを持ちたい』というこだわりですな。『オペラは音楽なんだから、交響曲管弦楽曲を聴くアプローチと何ら変わりない』という意識もあったりする。)
 
実は例外があって、これまでの経験で、事前に音楽の耳慣らしをせず、物語の予習もせず、いきなり映像を視聴した作品が、僅かであるが、ある。
 
そうした例外の一つが、魔笛であった。
この時視聴したのは、バイエルン州立歌劇場、今回の来日公演と同じエヴァーディング演出プロダクション(サヴァリッシュ指揮)のレーザーディスク。LDは、当時最先端の映像メディアだった。そういう時代がありましたなあ。
 
この魔笛を、事前にストーリーを知らずに見ると、混乱する。私も「なんじゃこりゃ??」と戸惑った。わかりますよね。
物語は、「悪党ザラストロによって夜の女王の元から誘拐された娘パミーナを、王子タミーナが救出すべく、ザラストロ帝国へいざ向かう。」という話で始まる。
ならばその後の展開は、「タミーノに幾多の困難が待ち受けるが、そのたびに魔力を持った笛に助けられ、見事に克服。ザラストロを退治し、遂にパミーナを奪還。喜ぶ夜の女王。パミーナとタミーノは結ばれ、めでたしめでたし。」となるはずなのである。
 
ところがどっこい、正義と悪党の構図がひっくり返るのだから、そりゃ見ていて混乱するわな。
 
まあ、どんでん返しというのは、本でもドラマでも映画でもありがちパターンで、別に珍しいわけではないのだが。
 
さて、このミュンヘンオペラの映像盤が、永久不滅というべき輝きを放っている大きな要因は、何と言ってもエディタ・グルベローヴァが夜の女王を歌っているからだろう。
 
グルベローヴァの夜の女王のアリア、皆さんご存知ですよね。
「聴いたことがない」という人、騙されたと思って是非聴いてみてほしい。ひっくりかえるで。とにかく、すげーの一言。キラキラと煌く高音、完璧なテクニック。これぞコロラトゥーラの極み。
今回の来日公演キャストだったブレンダ・ラエも頑張ってはいたが、グルベローヴァの足元にも及ばない。
っていうか、比較は厳禁。天下無敵、誰も敵わないのである。
 
私はこの魔笛レーザーディスクを購入した当時、自宅にクラシック仲間が遊びに来ると、必ずこの映像を見せた。「旦那、いいもん入手しましたぜ、優れもんですぜ、へっへっへ・・」と見せつけ、聴いて驚く友人の顔を見て満悦に浸っていた。「な? すげーだろ? だろぉ~?」ってな。
 
今回魔笛公演を観た後、改めてこの映像を見直してみたが、さすがに画質の悪さに古さを感じたものの、演奏の鮮度はいささかも失われていなった。
 
それに、30年以上前の収録なので、出演者がみんな若い!!
ルチア・ポップ、フランシスコ・アライサ、クルト・モル、ヤン・ヘンドリック・ロータリング、ヴォルフガング・ブレンデル、そして指揮者サヴァリッシュ、みーんな若い。
 
ところで、今回の来日公演では、大団円の第二幕ラストシーン、勢揃いした出演者の中に、地獄に落ちたはずの夜の女王やモノスタスらも混じっていて、驚いた。
映像の方を見ると、こちらには彼らは登場せず、仲間はずれのまま終幕。
 
原演出家はとっくに鬼籍に入っているので、現在の劇場演出責任者が変更を加えたのだろうけど、それでいいのだろうかと、ちょっと気になりました。