クラシック、オペラの粋を極める!

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2017/9/29 バイエルン州立歌劇場 魔笛

2017年9月29日   バイエルン州立歌劇場
演出  アウグスト・エヴァーディング
マッティ・サルミネン(ザラストロ)、ダニエル・ベーレ(タミーノ)、ヨハン・ライター(弁者)、ブレンダ・ラエ(夜の女王)、ハンナ・エリザベス・ミュラー(パミーナ)、ミヒャエル・ナジ(パパゲーノ)、エルザ・ベノワ(パパゲーナ)   他
 
 
とっても感動しました。正直、魔笛でこれだけ感動できるとは思いもよらなかった。本当は行くことさえパスしようと思っていた公演。チケットを買って大正解だった。
 
感動できた要因は、いくつも挙げることができる。
 
まず、純粋に音楽を楽しむことができたこと。演出がオーソドックスだったためだ。
モーツァルトの音楽は偉大である。私は古典よりもロマン派以降の近代の作品を好んでいるが、やっぱりモーツァルトの音楽は素晴らしいとつくづく思った。
 
魔笛を聴いたのが久しぶりだったというのも、素晴らしい音楽の再認識に貢献した。
前回、2012年4月にフランクフルトで鑑賞したが、その時は12時間フライトの到着後、すぐに劇場に向かったため、案の定というか半分以上居眠りしていたので、とてもじゃないが「聴いた」とカウントできない。
その前は2009年10月なので、つまり8年ぶり。その間、録音も聴いていないし映像も観ていない。
「久しぶり」というのは、鮮度を生じさせるものなのである。
 
魔笛に限らず、モーツァルトの作品は久しぶりに聴くと感動するというのが、私の経験的結論なので、フィガロにしても、ドン・ジョにしても、何でもホイホイと行かず、少しガマンして公演を厳選するようにしています。NHK音楽祭のドン・ジョをパスしたのも、そういう理由。
 
話を元に戻して、次に「モーツァルトの音楽が素晴らしかった」と認識させてくれた演奏が、これまた素晴らしかった。
オーケストラの音色が非常に鮮明だ。各奏者の演奏がとても機能的で、古典なのに現代の演奏として蘇り、キラキラと輝いている。もちろん、指揮者フィッシュのリードのおかげだろう。
 
演出は、上に書いたとおりオーソドックスだが、単に美しいだけでなく、照明や装置を使って場面を巧みに転換させていたのが、良い。
なんだかんだ言っても、動きのある舞台というのは飽きないし、観ていて楽しいものだ。これだけ長く続いているプロダクションなのに古色蒼然とならないのは、本当にすごいこと。
 
サヴァリッシュ時代に収録された映像は今なおこの作品の決定盤であり、当時の懐かしいキャストの歌唱と重ねながら馴染みのある一つ一つの場面を辿っていけたというのも、感動を大きくさせた要因の一つ。
 
出演歌手は、サルミネンを除けばみな若手や中堅だが、非常に手堅く、そして盤石だった。突出した歌手、歌い方にクセのある歌手がいないので、それが功を奏して絶妙なアンサンブルを生んでいる。モーツァルトのオペラはこれでいいのだと思う。
ザラストロも、別にサルミネンじゃなくて、アンサンブルとして溶け込めるような中堅歌手で良かったと思う。サルミネンは偉大なベテラン歌手だが、もうそろそろご隠居した方がいい。聴いていて、ちょっと辛かった。
 
私の隣に座っていたお方は、たぶんきっと相当の通の方だとお見受けしたが、他の歌手にはしっかりと拍手を贈っていたが、唯一、夜の女王のラエさんに対してだけはだんまりを決め込んでいた。ブーイングを飛ばさないのがせめてもの情けみたいな(笑)。
まあなあ・・・。気持ちは分からんでもないが、じゃあ、ラエ以上にあのアリアを完璧に歌える歌手が今の世界にどれほどいるのか、ってこと。
 
まさかサヴァリッシュ盤で歌っているグル様と比較しているなんてことは、ないとは思いますけどねえ・・・。
夜の女王を歌うソプラノ歌手って、つくづく大変だよあ。伝説的な歌手の伝説的な歌唱が残っちゃっているわけですからねえ・・・。超絶的に難しいアリアを歌うだけでも大変だというのにねえ・・・。