2016年12月20日 フィレンツェ歌劇場
指揮 レナート・パルンボ
演出 レオ・ムスカート
スザンナ・ブランキーニ(アビッガイッレ)、ディミートリ・プラタニアス(ナブッコ)、パオロ・アントネッティ(イズマエーレ)、リッカルド・ザネッラート(ザッカリア)、アンナ・マラヴァージ(フェネーナ) 他
素晴らしい公演だった。
長旅後の初日だったし、自分としては翌日以降のウェルテル、あるいはスカラ座の前座みたいな扱い。期待は決して大きくなかった。それだけに感動を得られた喜びは大きい。
これぞイッタァーリア!
そういう公演だった。
イタリアで観るイタオペ、コテコテの本場上演。イタリアに来たという実感が沸いた。これを喜ばずにいられようか。
どんな公演か、すぐに想像がつくだろう。
音楽が優先、歌が優先。
演出はオーソドックス。ストーリーに忠実。
だからと言って何もしていないわけではない。音楽が際立つような演出。音楽で語らせる演出。
歌手たちが主役を務めつつ、基盤を熟練マイスターのパルンボががっちり支える。
指揮者は起点や流れを先導しているだけではない。細かなニュアンス、微妙なタッチ、音色の使い分けまできっちり手を入れている。目指している方向性がしっかりと聴き手に伝わる。一公演ごとにリハーサルを積み重ねるイタリア流スタジオーネ・システムの良い点だ。
歌手も粒が揃っている。
あれから随分と経ち、それ以来の鑑賞だったが、芯の強さはいささかも衰えていない。むしろ、更にパワーアップして、なんだかうれしい。
いぶし銀のザネッラート。陰ながら公演の質の向上に寄与する職人歌手だ。
ナブッコ役のプラタニアスは、そういえば昨年のコヴェント・ガーデンで、カヴァレリアのアルフィオと道化師のトニオでいい味出してたよな。威力のある鋭い声ではないが、渋い。ついでに顔と体形はキャラが濃い(笑)。
演出に話を戻すと、特に照明の使い方に巧みさを感じる。明るさの加減をサッと変え、スポットライトを活用し、登場人物の複雑な心境の吐露にフォーカスしている。
現代演出を嫌悪するオペラファンは、こういう演出ならきっと満足するだろうと思った。日本でやれば、称賛間違いなしだろう。
なんだったら新国立劇場がレンタルしちゃえばいい。オリジナル制作した3年前のG・ヴィック版なんて、たった一回でもうお蔵入りの気配だからねぇ。まったくもったいない。