指揮 ジャンルイジ・ジェルメッティ
演出 アンドレア・デ・ローサ
小ぶりなブッセート・ヴェルディ劇場の魅力も捨てがたいが、イタリアの名劇場の一つであるレージョも、その名に相応しく、気品があって美しい。伝統的で豪華な馬蹄形劇場のパルコ(ボックス席)に着席すると、自分もステータスを得て貴族になったような気分になる。なんたって王立だもんな(笑)。
それに、やっぱりイタリアはオペラの国、カントの国。歌劇場は特別な場所なんだと思う。
![イメージ 1](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/sanji0513/20190811/20190811172203.jpg)
今回、自分のパルコの場所がステージに近かったので(つまり真横から見る感じなのだが)、ピット内が非常によく見えた。
そこでジェルメッティのタクトを注意深く観察することが出来た。
すっかりベテランの雰囲気が漂い、なんとなく巨匠らしくなってきたジェルメッティ。
タクトの姿はお世辞にもカッコ良いと言えない。むしろぎこちない。ヴェルディ特有の溌溂としたリズム感はあまり鋭くない。
また、合唱が絶品だった。
いかにもイタリア人らしく、縦の揃えは合わないのだが、イタリア語特有である母音の発音、喉がパカーっと開いた声の圧力は尋常ではない。日本のカンパニーでは決して味わえないド迫力。何度も恍惚状態に陥った。
歌手はやっぱりタイトル・ロールのザネッラートか。(ベルゴンツィさん、やったぜ!)
威圧的な声ではないが、渋さと色気があって、役に合っていた。
マリア・ホセ・シーリも素敵だ。
オダベッラという役は男勝りの強い女性なので、このためパワフルに大声を出す人が多いが、シーリはそこで勝負せず、端正な発声に徹しているところが好印象だ。
演出は、さすがに大昔のフン族の物語ではなく、現代もしくは普遍的なものに置き換えられているが、基本的にはオーソドックス。
演出を見せるのではなく、歌で魅せる。
あらためて、イタリアの正統かつ王道を見せつけられた。
この日の公演は、開演時間が午後5時。終演は午後7時半。
ということは、ディナーをとる時間がたっぷりある。
パルマは美食の街でもある。
普段から「オペラ鑑賞がすべて。オペラ、おしゃれ、食事の3点セットで全体的な雰囲気を楽しもうとするミーハーな連中とは違うぜ。一緒にしてくれるなよ。」と偉そうなことを言っているオレ。
だが、素晴らしい公演の後においしい料理とおいしいワインを味わい、「うーん、やっぱ、有りかも(笑)」とつい実感してしまう、パルマの秋の夜長。