指揮 ダニエル・ハーディング
ジョシュア・ベル(ヴァイオリン)
ブリテン ピーター・グライムズより4つの海の間奏曲
ブラームス ヴァイオリン協奏曲
「路上パフォーマーに扮し、ストラディバリを駆使して地下鉄構内で演奏したら注目されるか」という実験を敢行。見事に皆から無視されたというオモロイ話題を提供してくれたジョシュア・ベル。彼の演奏を聴いたのはものすごく久しぶりだが、見かけが全然変わってない。相変わらず若くてカッコイイ。ええのう。
しかも、自らの腕前に酔っているかのようなカッコつけ演奏スタイルまで全然変わっておらず、笑った。
弾いている姿を見ていると「そんな大げさなアクションが必要か?」とツッコミを入れたくなるので、純粋に音楽を評価しようと思い、しばらく目をつぶって聴いてみた。そしたら、いつの間にかこっくり。周囲の拍手で目が覚めた。ああ、終わっちゃったのね(笑)。
・・・いやいや、(笑)じゃねえっつうの。
まったく困ったもんだ。(誰が? 俺? ベル?)
メインのロメジュリ抜粋。
私はこの曲をよく知っている。劇的交響曲と銘打っているが、全曲版は合唱が入り、ソロ歌手が入って、情景が分かるようになっている。
オペラがそうであるように、物語を伴う音楽の中で、その中核を担うのは歌なのだと思う。歌が入ると、音楽はドラマチックに動き出す。そして、このロメジュリもその例外ではない。
メゾ・ソプラノが歌う美しい愛の詩、バスのロランス神父が歌う和解の呼び掛け。誰もが心打たれる肝心の場面が、管弦楽バージョンだと抜け落ちてしまう。
残念だった。物足りなかった。
実現が簡単ではないのは百も承知。お金もかかる。それでもやっぱり合唱を付け(日本の団体だっていいじゃないか)、ソリストを呼び、本格的全曲演奏に臨んでほしかった。天下のパリ管だぜ?
でも、結局そういうわけでさ、一番満足したのはピーター・グライムズになってしまったわけ。
ま、それはそれで全然いいんだけどね。