クラシック、オペラの粋を極める!

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2016/5/1 ウィーン国立トゥーランドット

2016年5月1日   ウィーン国立歌劇場
指揮  グスターヴォ・ドゥダメル
演出  マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
リズ・リンドストロームトゥーランドット)、ユジフ・エイヴァゾフ(カラフ)、アニータ・ハルティッヒ(リュー)、ハインツ・ツェドニック(皇帝アルトゥム)、ダン・パウル・ドゥミトゥレスク(ティムール)   他
 
 
もうデュダメルのファンになってしまいそうだ!
あの若さなのに、もう既にウィーン・フィルとの相性は抜群。まるで相思相愛。特別なことをしているようには見えず、ただ音楽に向き合い、取り組んでいるだけのようなのに、音はどんどんと躍動する。ノリがいいというと軽く聞こえてしまうが、テンポ感が抜群で、みるみるうちに音楽に生命力が溢れてくるのだ。
とにかく、音楽するのが楽しくて楽しくて仕方がないという感じ。決める所でビシッと決める鋭敏なタクトも超カッコイイ。
また、歌手に対しても「ここはお任せします」という信頼のメッセージを送ることにも余念がなく、とことん寄り添う姿勢がめちゃくちゃ好印象。
 
カッコイイぞ!デュダメル。
しかも、キミはいい奴だろ!デュダメル。
みんなに好かれるタイプだろ?デュダメル。
 
いやあこの指揮者、イイわ。
来年のニューイヤーコンサートの指揮者は彼だってさ。知ってた?
 
歌手について。
カラフは当初はJ・ボータだったが、体調不良が続いており、降板した。代役は今話題のネトレプコの旦那。3月に夫婦で日本に来たが、私は聴けなかった。
この人、アクートに命を賭けてるね(笑)。声の伸びには絶対の自信があるのだろうな。ただ、今のところまだそこまでだが。
でも、この強靭な声を世界の歌劇場が放っておく手はなかろう。そのうち「ネトレプコの旦那」としてではなく、実力で自らの名を轟かせる日がやって来るかな?
 
タイトルロールのリンドストロームは、この役の第一人者。6年前にメトで観た時もこの人だった。この人も声は強靭。体は細いのに、どうしてあれほど張りのある声を出せるのだろう?
9月には日本にも来てブリュンヒルデを歌うよね。結構イケるんじゃないかな。
 
この日、一番の拍手喝采をもらっていたのが、リューのハルティッヒ。まあ、リューという役が聴衆の心を掴みやすいのだが、それを差し引いても十分立派だった。
 
久しぶりに聴いたツェドニック。びっくりするくらい声が弱々しい。老いた皇帝役に徹した結果なのか、それとも本当に衰えてしまったのか・・・。よくわからんが、どうも後者のような気がしてならない。
 
マレッリの演出について。
もっとコテコテのオーソドックスで来るかと思っていた。
彼はこのウィーン新演出に先立ち、ブレゲンツ音楽祭の「トゥーランドット」現行プロダクションでも制作を担当している。映像にもなっているが、いかにも野外(湖上)の音楽祭らしいスペクタクル性がふんだんに発揮されていたからだ。
 
基本演出プランは、舞台上に観客席を設け、北京市民を観客に仕立てて劇中劇にしたというもの。アイデアは悪くない。小細工も至る所に施しており、「なるほどそうするか」と唸ることが多かった。
 
個人的に、特に印象的だったのは次の点。
3つの謎を当てられ、異国の者の手に自らを委ねることを拒もうとして、思わずナイフを取り出すお姫様。そのナイフをカラフが振り落とす。落ちたナイフをリューが拾う。そう、彼女はこのナイフで自殺するのだ。
自殺を遂げ、リューの手からこぼれ落ちたナイフを、今度はティムールが拾う・・・。
もうおわかりであろう、その後ティムールがどういう行動を取ったか・・。
なかなか興味深い演出だった。