2016年1月17日 東京フィルハーモニー交響楽団 オーチャードホール
指揮 井上道義
そんな彼が自信を持ってプログラムを組んだ2014年7月のオーチャード定期。もちろん私も全力でチケットを買った。
ところが、病気のため残念ながら降板。
指揮者だけでなく曲目までも変わってしまった公演のチケットを、私はあっさりと売り飛ばした。
復帰を遂げたミッチーさんは、諦めていなかった。執念のリベンジ公演。その影には、桂冠指揮者尾高忠明氏の「このプログラムは彼に振らせるので、復帰まで取っておくように」との口添えがあったのだとか。美しい話じゃありませんか。
私自身、復帰後の氏の公演に足を運ぶのは今回が初めてだったが、以前と変わらぬダイナミックなタクト、いや、以前よりも更にパワーアップしたタクトを見て、本当に嬉しくなった。
それでいて、決して音楽に溺れることなく、冷静かつ緻密、そして大局的。没入しながらも音楽がどこに向かっているのか、オーケストラに何が起こっているのかを確実に押さえ、常に一歩先を行って全体を導く指揮だった。
東京フィルも、指揮者の熱意によく応えていた。ただし、作品が持つ重厚さにやや押し負けていたような印象を受けたのは、ちょっと惜しかった。
それにしても、ハーディング新日本フィルと今回の東京フィル、戦争がテーマとなった公演が続いたのは、果たして単なる偶然だったのだろうか・・・。