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2022/11/12 N響 A定期

2022年11月12日   NHK交響楽団 A定期演奏会   NHKホール
指揮  井上道義
伊福部昭  シンフォニア・タプカーラ
ショスタコーヴィチ  交響曲第10番


2024年末での引退を宣言している井上道義氏。ということは、あと2年。
良い決断だと思う。「体が動かなくなって、周りから支えられて、それで巨匠扱いされるのは御免である」と本人は言っているらしいが、理解できるし、潔い。情熱的な全身の動きでオーケストラを導き、音楽を開花させることが彼の真骨頂であり、それが彼自身の指揮者としてのアイデンティティなのだから。

あと2年の間に、何回彼が指揮する公演に行くことが出来るだろうか。
良いプログラム、「あー、これ聴きたいな」と思うプログラムをやってくれれば、私は行く。そうじゃなければ行かない。だから、これからは毎回が「これが最後かも」と思って行くことになるだろう。もしかしたら、本公演が最後かもしれないし・・。

その井上さんがライフワークとして取り組んできたのが、他ならぬショスタコーヴィチだ。私も何度も彼のショスタコを聴いており、てっきり過去に10番を聴いたことがあると思っていたのだが、調べてみたら、なんと、無かった。ならば、全力で行かねばなるまい。


その前に、まずは伊福部作品。
北海道アイヌの民謡をベースにしており、旋律といい、リズムといい、エキゾチックさ満載。よく「伊福部サウンド」と称されるが、有名な「ゴジラ」の映画音楽に通じるドラマチックな親しみやすさが魅力だろう。

で、こういうのをやらせたら天下一品なのが、井上ミッキーというわけ。
もう笑っちゃうくらいノリノリで、得意のタコ踊り炸裂。出た~(笑)。

案の定、会場も大盛り上がりだったが、私はというと、いかにも聴衆ウケって感じがして、少し冷めてましたが・・・。民謡をオーケストレーション化した作品は、ドヴォやスメタナに相通じるものがあり、個人的にちょっとね。


メインのタコ。
こちらはライフワークにしているだけあって、スコアを完全に掌握した的確な描き分けが見事。陰影のある響かせ方も巧みで、重量感も申し分ない。
N響はさすがの合奏能力を発揮し、指揮者の要求に応えた。特に弦楽器のアインザッツがビシッと決まり、まるでピアノの強靭な打鍵のような「ガッ!」というサウンドが何ともカッコいい。


配布されたプログラムによれば、井上ミッキーさん、「ショスタコーヴィチは自分だ」と豪語しているのだとか。
思わず苦笑し、「何言うとるねん!」とツッコミたくなったが、最後の音を輝かしく鳴り響かせた後、サッと客席側に振り向いて大見得を切った姿は、まさしく「オレがショスタコーヴィチ」でした(笑)。