クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2015/7/24 スカラ座オテロ

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2015年7月24日   ミラノ・スカラ座
指揮  ムハイ・タン
演出  ユルゲン・フリム
グレゴリー・クンデ(オテロ)、オルガ・ペレチャトコ(デズデモナ)、ロベルト・タリアヴィーニ(エルミーロ)、ファン・ディエゴ・フローレスロドリーゴ)、エドガルド・ロチャ(イヤーゴ)、アンナリサ・ストロッパ(エミーリア)   他
 
 
 2008年11月のロッシーニ・オペラ・フェスティバル初来日公演でこの作品を初めて鑑賞したという方は少なくないだろう。私もこの時が初めてだった。滅多に観られない作品を鑑賞できることを喜びつつ、「でも現地のペーザロでは、ロドリーゴフローレスなんだよなー」などと無い物ねだりをしたものである。
 あれから7年。本当にフローレスが出演するオテロを観るチャンスが訪れた。しかもスカラ座。この機会を逃すべからずと、ヘルシンキからこの公演だけのためにミラノにやってきた。
 
 実は当初の予定指揮者はイギリスのJ・E・ガーディナーだった。ガーディナーが振るオペラ公演を鑑賞する機会もほとんどないので非常に楽しみだったが、残念ながら降板。中国人指揮者に変更になった。
 
 このムハイ・タンという指揮者の略歴や活動範囲について、私はほとんど知識がない。唯一観たことがあるのが、映像ソフトとして市販されているロッシーニオテロチューリッヒ歌劇場のライブ版である。つまり、タン氏はロッシーニオテロについて、既に経験と実績を有していたことになる。
 実際、このチューリッヒライブのオテロ、指揮者のコントロールによる音楽全体が実に素晴らしい。作品を完全に手玉に取っており、それを自在に操るタクトの技術そして切れ味がなかなか見事なのである。なので、今回のスカラでも私は何の心配もしていなかった。(もちろん「ガーディナーで聞きたかったよな」という気持ちは拭い切れなかったが・・・。)
  外見で言うと、我らが大野和士を縦に潰し横に伸ばしたような感じのずんぐり系(笑)。見た目はユーモラスだが、音楽はさすがだったと賞賛したい。チューリッヒでは若干古楽奏法を採り入れていたが、本公演では現代奏法だったので、スカラ座という伝統と格式に一歩譲ってしまったのであろうか・・・。
 
 歌手では、主役のクンデももちろん素晴らしかったが、やっぱりやっぱりフローレス
 もうこれは仕方がないのである。だって、フローレスは世界最高のテノールなのだ。不世出の天才なのだ。それは数々の伝説的歌手を創出してきたスカラ座においてもまったく遜色がなく、燦然と輝きを放っていた。
 これほど傑出した歌手が現存しているというのに、「今」という時代に活躍しているというのに、こうして海外に出向かないとそれを味わうことが出来ないというのは、本当に残念無念。フローレスが最後に日本にやってきたのはもう9年も前だ。4年前に来日のチャンスがあったが、例の震災と原発の事故で夢と消えた。これは痛恨としか言いようがない。
 私のように海外に行くことが出来ればいい。でも、なかなか難しい方も多くいらっしゃろう。そういう日本のファンのためにも、是非是非来日公演が実現して欲しい。切に願う。
 
 今回の舞台はベルリン州立歌劇場からの貸出しプロダクションだった。リンデンのインテンダントであるユルゲン・フリムの演出は手堅い。衣装や装置は時代や場所を特定させず、普遍性を打ち出している。スペクタクル性を追い求めず、舞台をシンプルにし、集中度の高い演技力で物語を描写させていた。
 
 それにしてもこのオペラ、ヴェルディ作品と違いがはっきりしていて実に興味深い。ロドリーゴの存在が大きいのだ。その結果、三角関係が一段とクローズアップされる。
 
上の掲載写真を見てほしい。一人の女性を巡って二人の男がムキになって対決。その間に入るデズデモナ。
 
聞こえてこないか、この歌が。
「喧嘩をやめてー。二人を止めてー。私のために争わないで。もうこれ以上・・」(作詞作曲:竹内まりや
 
あるいは一匹のメスを求めてオス同士が角を突き立てて戦う野生動物の世界か(笑)。
この作品はいちおう「セリア」の範疇だと思うが、私なんぞはアホくさくて「コメディ」に見えてしまう。うーむ、いかんいかん(笑)。