オペラは高尚と言われるが、そのほとんどが他愛もない恋愛物語。中味の音楽は愛の賛歌で溢れまくっている。
女性が男性を誘惑するアリアでは、ビゼー「カルメン」のハバネラやセギディーリャが有名かつポピュラーだと思うが、私は絶対にデリラの方が官能的だと思う。カルメンの比じゃない。こんなにも魅惑的なアリアを歌われたら、男は絶対に落ちる。事実、サムソンはあっけなく陥落する。オレも絶対落ちる。(オレのことなんかどうでもいいか)
いやー、本当にとろけるような珠玉のアリアだ。こんなに美しくとろけるようなメロディを作って、サン・サーンスはホント天才だと思う。
録音や映像をそれほど所持しているわけではないが、たまらなく最高なのはオリガ・ボロディナ。デリラを歌ったら、彼女の右に出る人はいないのではないか。もう本当にうっとり。
ボロディナは言うまでもなく世界最高のメゾ歌手の一人だが、残念ながらそれほど日本に来ていない。そんな中、2001年メトロポリタンオペラとの来日公演でデリラを披露してくれたのは、日本のオペラファンへの最高のプレゼントだった。この公演でドミンゴとボロディナのデュエットを聴いた人は、どうかその思い出を一生の宝物にして欲しい。
このオペラの魅力は、デリラのアリアだけではなく、全曲にわたって音楽が美しいこと。有名なバレエ音楽バッカナールもある。ストーリーだって面白い。大団円のスペクタクルな神殿破壊はどのような演出が施されるのか楽しみ。
だというのに、こんなに素晴らしい作品がいったい日本で何回上演されたというか!詳しくは分からないが、上記のメトと1980年代のロイヤル・オペラ・ハウス来日公演くらいではないか。いくらなんでもひどすぎる!