指揮 アントニオ・パッパーノ
諏訪内晶子(ヴァイオリン)
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番
ああ、イタリアだ。これぞイタリアの音だ・・・。
なーんて、イタリアのオーケストラの音色を「明るい、開放感のある」などと表現するのは、実を言うといかがなものかと思う。だって、定形イメージそのまんまじゃないか。もうちょっとマシな表現が出来ないものかのう。
でもね、本当にそういう音なのですねー、これが。笑っちゃうくらい。
だから仕方ないけど、そう表現するしかない。
彫りの深さとか陰影とか、そういうのはない。色彩は単一のキラキラ原色のみ。変化させているのは強弱だけ・・・なんてことを言ったらパッパーノに怒られちゃうか(笑)。すみません。でもそう聞こえるんです。
ただし、その強弱幅は大きい。振動数も大きい。だから良く響くし、ホールも共鳴する。
実は先日のロンドン・ミュンヘン旅行で、最終日、私はミュンヘン郊外のガルミッシュ・パルテンキルヘンに行ってきた。ドイツの最高峰ツークシュピッツェ山に登ってきた。もちろん登山ではなくロープウェイでだけど。
コンチェルトの諏訪内さんはとても優雅なブルッフ。女性らしいしなやかで曲線を描くような奏法。その分、力強さや鋭さはない。でも好演だった。
ブルッフのコンチェルト、自宅のオーディオで聴くことはほとんどないが、久しぶりに聴くといい曲だなあと思った。
ところで、今回のサンタ・チェチーリアの来日公演で、個人的に再会を楽しみにしていたのが、ティンパニーのオヤジ。プロの首席奏者に向かってオヤジとか言っちゃ失礼だけど、でも私は大いなる親しみを込めてオヤジと呼ばせてもらう。
前回の来日公演で、その個性的な叩き方が目に留まったのである。それに「ああいうオヤジ、イタリアにいるいる!」と。
ピッツェリアの店主もああいうオヤジが多いし、タクシーの運ちゃんもああいう感じ。カルチョのスタジアムでも、年季の入ったサポーターで腕を組んでジッと戦況を見守っているオヤジは大抵あんな感じ。頑固だけど優しい。うるさいけど筋が通っている。職人としてのプライドは超一流。
オヤジさん、あなたのティンパニーの叩き方、最高っす。