クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

イドメネオとヴェルディ

 イドメネオは鑑賞する機会が少ない演目である。このためこれまで気が付かなかったのだが、今回の二期会公演を見て、物語の中にヴェルディ作品との類似性を見つけた。
 このことについてはひょっとすると既に語られ、知られていることかもしれないが、私自身の新たな発見だったので、一応ここで書き留めておこうと思う。お願いだから「え!?今頃気づいたの?」とか言わないでね。
 
 争っている二国、王子と捕虜となっている敵国王女との禁断の恋、嫉妬に狂う同盟国王女との三角関係・・・お判りであろう、そう、アイーダである。
 
もう、そのまんまじゃんか(笑)。
 
 今回の二期会のミキエレット演出では、アムネリスに当たるエレットラについて、高級ブランドの派手な服装で身を包んだセレブ女性に仕立て上げた。
 ここで言うところのブランド品はすなわち「金」であり、「パワー」の象徴である。エレットラは何でも思い通りになるパワーを持っている。でも、思いを寄せる人の心だけは動かせない。
 高級ブランド品は結局何の役にも立たず、最後は激情のアリアを歌った後、服を脱ぎ捨て、金髪のかつらを剥ぎ取り、泥にまみれ地に堕ちていく。
 ミキエレットが描写したエレットラは、まさにプライドをズタズタにされて愕然とするアムネリスそのものであった。この金ピカのエレットラを見て、私は初めてアイーダとの類似性に気がついた。別の演出だったら果たして気がついたかどうかは、分からない。
 
 実はもう一つ見つけた。
 息子を愛する情とその息子の命を差し出さなければならない運命の狭間で苦悩する王・・・そう、ドン・カルロのフィリッポである。
 若干こちらの方がこじつけ的であるが、王の苦しい胸の内の吐露という意味では共通なのかなと思う。
 
 このように演出というのは、観ている側に想像力を働かせ、思いを巡らせる材料を提供してくれる。別に演出家の仕掛けを100%理解できなくたっていい。勝手にこちらが「あれ!?」と何かを見つけるだけでいい。色々な解釈があり、色々な発見があり、作品が持つ多様性について気づかせてくれればそれでいい。
 そういう意味において、ミキエレットはアイデアが豊富で才能のある演出家だと思う。