指揮 アンドレア・バッティストーニ
演出 ジュリオ・チャバッティ
原演出 マウリツィオ・ディ・マッティア
合唱 二期会合唱団
鑑賞中、私はじわーんと湧き起こる悦びにずっと浸っていた。嬉しくて嬉しくて、仕方がなかった。
なんて素敵な音楽なのだろう。なんて素晴らしい作品なのだろう。
幸せな時間だった。
一口に「音楽鑑賞」と言っても、その楽しみ方はいろいろだ。人によって違うだろう。
好きなアーティストに注目することもあるだろうし、演奏者の技量に注目することだってあるだろう。
オペラなら、指揮者、オーケストラ、ソリスト、演出、装置、照明・・・見どころ聴きどころはたくさんある。
公演によっては、そうした中に、残念ながら期待に沿わないポイントが発生するかもしれない。
それでもクラシック音楽やオペラの鑑賞で「いいな」と思うのは、いくつかの点で気に食わないことがあったとしても、音楽そのものの素晴らしさ、作品そのものの素晴らしさに鑑賞の意義を見い出し、そこに感動が出来ることだと思う。
私なんか、特にそうだ。
正直に言うと、今回のアイーダ、演出、というかソロ歌手への演技の振付けに関しては、個人的にまったくダメだった。
ハッキリ言って古色蒼然。
愛の言葉を交わしている場面で、お互いを見つめず相方にそっぽを向き、客席に向かって、棒立ちで両手をかざしながら朗々と歌っている歌手を見ると、「おまえなあ・・」とツッコミを入れたくなった。
でも、そういった些細なことを超越して、アイーダの音楽の素晴らしさにやられた。
特に私はつい先日、ヴェルディの故郷を訪ねている。
思い出に浸りながら、素晴らしい音楽に身を委ねることが出来たのは、この上ない喜びだった。
「音楽の素晴らしさにやられた」と書いたが、その音楽の素晴らしさをストレートに伝えてくれたのが、指揮者バッティストーニである。その功績を称えたい。
彼の音楽はドラマそのものである。
バッティストーニのタクトは熱が籠もっているが、心が揺さぶられるのは、例えば凱旋の場のような華々しい場面ではない。
上手いなあ、と思う。音楽のツボを知っているなあ、と思う。
ラダメス役の城さん。
代役だそうである。元々伝令役だったそうだ。
「どんなもんじゃい」と懐疑的だったが、いや驚いた。立派なラダメスだった。今後の活躍に大いなる期待を寄せたいと思った。