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2014/8/7 PMFオーケストラ

2014年8月7日  PMFオーケストラ東京公演   サントリーホール
指揮  佐渡裕
セルゲイ・アントノフ(チェロ)
バーンスタイン  キャンディード序曲
チャイコフスキー  ロココの主題による変奏曲
 
 
 本来なら指揮者はマゼールだった。各国から集まったアカデミー生にとっては、世界的巨匠から指導を仰ぐまたとないチャンスだったはず。演奏キャリア上の大きなインパクトになったかもしれない。逝去を嘆き悲しむ聴衆ファンも多いと思うが、演奏側の彼らにとっても残念な一件だっただろう。
(私はこれまでマゼールについて、「はっきり言って嫌い」などと言って憚らず、随分とネタにしてきたわけであるが、今はただ故人のクラシック音楽界における功績を讃えることとしたい。)
 
 さて、そのマゼールに代わって登壇したのは佐渡裕。ピンチヒッターとしてはこれ以上ない適任だ。PMFのメモリアル指揮者であるバーンスタインの直弟子であり、本フェスティバルの創設にも深い関わりがあった同氏である。バーンスタインの意思とPMFの精神を彼ほど理解している人はおらず、そういう意味で鮮やかな代替出演決定と言えるだろう。
 
1曲目、キャンディード。
そう!これ! これなのだ。これぞバーンスタインの意思とPMFの精神そのものなのだ。
同時にこの曲は佐渡裕の代名詞でもある。まさに挨拶代わりの一発。電光石火、疾風迅雷。佐渡のノリノリのタクトに、感度抜群のPMFオーケストラがものすごく俊敏な演奏で応える。いいぞ!お見事!なんて快適なんだ!
 
というボルテージは、二曲目のヌルい曲によって一気に萎縮消沈(笑)。
ヌルいだなんてお叱りを受けちゃいそうだが、自分の胸に手を当てて正直に言うと、ワシはこの曲ヒジョーに退屈である。個人的にね。まことにスマン。
開き直っちゃうけどさあ、誰だってつまらんと感じてしまう曲はあるでしょう。だから仕方がないのである。だいいちチャイコだからといって全部が全部名曲だとは限らん。
 
萎んでしまったボルテージは、メインのタコ5で沸騰急激回復。
PMFオケの演奏はスタイリッシュでクール。運動能力の高いスポーツ選手のようなカッコよさ。いやあ、若いってのはええのう。羨ましいのう。
 
 それにしても、佐渡裕のタクトを眺めながらしみじみ思う。いい指揮者になってきたなと。
 一球入魂的な熱血ぶりは相変わらず。だが、昔はただ熱いだけの指揮者だった。音楽に没入することがすべてみたいな指揮者だった。
 今は全力を注ぎながらも、どこか客観的で冷静で俯瞰的である。まっしぐらでありながら、どこか余裕があり、ゆとりがある。
 
 若者のオケを統率していたから、たまたまそのように見えただけなのだろうか。
 いや、それだけではないだろう。きっと指揮者としていい感じに成熟してきているのだ。自然と引き出しが増えてきたのだ。
 そうした指導者としての風格は、間違いなく若い演奏家に好影響を及ぼしている。オーケストラの反応がすこぶる良いのは、個々の奏者が佐渡の音楽の魅力に吸い込まれている何よりの証拠だ。
 
 演奏が終わり、指揮者が首席奏者やパート奏者を称えて起立させると、客席からの拍手以上に、ステージ上の仲間たちからやんやの喝采。足を踏み鳴らし、歓声を上げるのも今やPMFの風物詩。
 カーテンコールが終了し、退席というところで、各奏者がお互いハグを交わし、健闘をたたえ合う。中には感極まって涙ぐんでいる人も。
 
 いやあ、若いってのはええのう(笑)。