2014年6月24日 アリス・紗良・オット&フランチェスコ・トリスターノ ピアノデュオリサイタル すみだトリフォニーホール
トリスターノ ア・ソフト・シェル・グルーヴ組曲
音楽には演奏する楽しみと聴く楽しみの両方があるが、より悦びが大きいのはどちらかと言えば、それは一概に言えることではないだろう。どちらが上かという判定をすること自体、ほとんど意味のないことかもしれない。
だが、聴くだけでなく、かつて演奏することも楽しんでいた人間として、これだけは断言できる。
「こと室内楽に関して言えば、断然演奏する方が楽しい。」
で、室内楽のコンサートでは、「演奏者自身がどれだけ音楽を楽しんでいるか」「演奏する喜びをどれだけ体現しているか」といったことを聴き手側に伝えられるか、聴き手がこれを感じ取れるかどうかがポイントになる、と私は思う。
この日の公演は、上記の点においてバッチリ合格点だ。
美男美女の若いお二人、どういう結び付きでデュオを組み始めたのかは知らないが、雰囲気がとても良かった。といっても恋人同士のランデブーという感じではなく、やんちゃな弟としっかり者の姉みたいな微笑ましさと面白さがあった。
音楽的にも、うまく合わせようという意向よりも、それぞれのやり方で演奏をし、お互いの演奏に触発されて、そこに相乗効果が生まれるといった感じだ。
プログラムの中では、もちろんメインのハルサイも素晴らしかったが、個人的にはラ・ヴァルスがラヴェルらしい色彩が感じられて、とても良かったと思う。トリスターノの自作自演は、若者らしい即興性に溢れた作品で、会場からの手拍子も取り込んでノリノリだった。
ところで、会場が満員で、ものすごい熱気があったのには驚いた。アリス・紗良・オットのこのところの人気急上昇ぶりを如実に示す大入りだが、ひょっとして先日、所ジョージの某バラエティ番組に大きく採り上げられたのも要因の一つなのだろうか。テレビの影響というのは大きいからねー。
終演後のサイン会も、私はすたこら帰ったけど、さぞかし盛況だったことだろう。
でもねえ、紗良ちゃん。概してそういう人気は一時的なものだぜ。あっという間に引くよ。気をつけな。