クラシック、オペラの粋を極める!

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2021/1/25 モルゴーア・クァルテット

2021年1月25日   モルゴーア・クァルテット   東京文化会館小ホール
荒井英治(第1ヴァイオリン)、戸塚哲夫(第2ヴァイオリン)、小野富士(ヴィオラ)、藤森亮一(チェロ)
ウェーベルン   弦楽四重奏曲
ベルク   弦楽四重奏曲
シェーンベルク   弦楽四重奏曲第1番


私の場合、リサイタル形式になっているようなデュオのコンサートにはよく行くが、トリオ、クァルテット、オクテットなどといった室内楽のコンサートにはあまり行かない。
別に「嫌い」というわけではないが・・・なんだろうね、あんまり聴かないんだよね。

大昔にヴァイオリンを演奏したことがある自分の経験上から一つ言えるのは、「室内楽は、自分たちがやるのは、大いに楽しい」ということだ。「奏でて楽しむ音楽」と言っていい。

逆に言えば、「聴いて楽しめる音楽かどうかは、各自のお好み次第」と、ちょっと歯切れが悪くなる。

もちろん「いやいや、絶対に聴いて楽しむ音楽だろ!」という意見を決して否定しない。
だが、少なくとも私の場合、演奏を聴いていて、少しでも「あ、コイツら自分たちで弾いて、自分たちで勝手に楽しんじゃっているな」と感じた時、一瞬で興ざめする。

私が室内楽コンサートにあまり行かないのは、たぶんこれが理由なんだろうと思う。


そんなわけであるが、なにはともあれ本公演のプログラムをやられたら、これはもう黙っていられない。「これやるか!? マジか!? ならば行かねば!」なのである。

その昔、ベルクの弦楽四重奏曲のスコアを見たことがある。
ラクラと目眩がした。
常軌を逸した作品。こんな難しい曲、どうやって演奏するのか。

本公演は、全部がそうした作品。これらをずらりと並べた意欲的な、というより、超難関、恐怖の自虐プログラム。演奏家にとって、正にチャレンジング。
演奏側だけではない。聴き手にも極度の集中力を強いる、上級者向け、試練のプログラムである。

だが、モルゴーアQの演奏は素晴らしかった。聴き応え十分の演奏だった。
単に弾き通すだけでも大変なのに、演奏を通じてそこから何が見つかり、何が生まれるかを懸命に探っている。作品の真髄に迫り、新ウィーン楽派の潮流にまで迫ろうとしている。「仲間で演奏して楽しんじゃっている」感ゼロ。

まあ考えてみれば、当たり前か。なんたって彼らは日本を代表する弦楽奏者たち。凄腕の名手。
「元東京フィルのソロ・コンサートマスター」「現東京シティ・フィルのコンサートマスター」「現N響チェロ首席」「現N響ヴィオラ次席」というそれぞれの肩書は伊達じゃない。


モルゴーアQの定期演奏会は、今回が50回目の記念公演。恥ずかしながら、私は初めて聴いた。
聞けば、結成の当初目的は、「ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲の全曲演奏」だったそうである。その目的は、既に過去3回も完結させているのだという。

私は自称「タコマニア」だというのに、これらの機会をいずれも逃しているのだ。

何たる失態・・・。恥ずかしい・・・。